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田原俊彦『愛は愛で愛だ』【ああ、変わらないな、と思える理由のひとつが】

このところ田原俊彦を目にする機会が増えたなと思っていたら、シングルがリリースされたそうだ。一時期はジャニーズから距離を置き、そのせいかメディアに出てくることもほとんど無くなっていた。90年代前半にメディアといえばテレビのことで、YouTubeなどない時代にテレビに出なくなった芸能人は「あの人は今?」カテゴリーに入ってしまう。インディーズレーベルも黎明期というに近く、メジャーレーベルで扱われなくなったら全国にCDを届けることも難しくなる。しかし田原俊彦は地道にライブやディナーショーを行い、ジャニーズ時代からの熱狂的なファンに支えられる。今やアイドル時代同期のほとんどがもう歌ったり踊ったりしなくなったのに、一時期干されていた田原俊彦がこうして歌って踊ってという活動をメインとして続けているというのがなんとも感慨深い。

テレビの懐メロ歌番組に出ては40年前のヒット曲を歌ってるのを見て、トシちゃんすごいなと思う。40年前の曲と振付けだし、なんとなくスローなダンスだなあと感じてしまうけれど、そもそも現代の最新のダンスと比較してはいけないのだろう。それに、現在59歳なのだ。来年還暦の人のダンスとはとても信じられない。足もよく上がるしな(足が上がることがひとつのセールスポイントなのだろう、40年前よりも足を垂直に上げる回数が多いように思うくらいだ)。

2週間ほど前にはサッカーのキングカズこと三浦知良が、所属する横浜FCがJ1に昇格したことで53歳5ヶ月でJ1に先発出場を果たし、最年長記録を大幅に更新した。2人は友人同士らしいが、2人に共通するのは、歌やサッカーが大好きなんだろうなあということだ。そうじゃないとこの歳までやらないし、好きでも普通はもうやらない。本当に好きだから、ストイックにトレーニングをすることができるのだろうし、なにより、ステージやグラウンドで全力を出している姿が楽しそう。

それにしても田原俊彦がデビュー40年で歌っているのを見ていて、ああ、変わらないな、と思える理由のひとつが、そもそも圧倒的な歌唱力なんか持ってなかったということだろう。同世代の歌手(あえてシンガーじゃなくて、歌手)が懐メロ歌番組に出演する時に「ああ、声が出てないなあ」とガッカリすることがある。ボーカリストにとって身体は楽器であり、肉体の衰えはそのままパフォーマンスの劣化につながる。歌える音域が狭くなり、歌声の大きさがどうしても小さくなる。全盛時の歌とは明らかに違う。違う歌を同じ人が歌っているからといって愛でるというのは、個人的にはどうにも受け入れにくい。もちろん年齢を重ねることで人は若い頃の肉体を維持できなくなるものだし、いくらキングカズが53歳でプロ選手といっても、20代のパフォーマンスと同じというわけではない。それと同じで20代の歌唱力を60代の歌手に求めるのは無理だとは解っている。解ってはいるものの、歌を聴くとどうしても声の違いを無視してただ賞賛する気にはなれないのだ。しかし、59歳の田原俊彦の歌はほとんど20代のままだ。それが嬉しい。いや、嬉しいのか? 別に嬉しいわけじゃないのかもしれないけれど、少なくともガッカリはしない。20代のパフォーマンスとなんら変わらないんだもの。若い頃は歌がヘタとか散々な言われようだったりもしたけれど、年齢を重ねてなお同じクオリティを保つことができているというのは、今になって気付くおおいなるメリットだったかも。圧倒的な歌唱力なんかで勝負するのではなく、独特の味でファンを、それも不遇の時代でも支えてくれる熱心なファンを獲得してきた彼ならではの、当時をリアルに彷彿とさせてくれるニューシングル曲だ。

(2020.8.15) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl