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700レビューを超えて



本田みちよ氏〜情熱の音楽家〜

 北沢東京さんがKANADeというバンドの曲をレビューしたのですが、そのKANADeが本田みちよさんのバンドだったのです。本田さんとは数年前から細い線でつながっていた知り合いだったので、これはちょっとレビューお願いしてみようと声をかけたら快く引き受けてくれました。本田さんはMUSIC SHAREというインターネット音楽番組を自力で主催していて、今年に入ってMUSIC SHARE京都を立ち上げ、今後も仙台、熱海、新潟などなど、続々とその輪を拡大させようとしています。その「知られてない音楽を世の中に紹介したい」という気持ちはこのmusiplと共通するところがあって、それをテレビ番組の形でゲストを呼んでとやっているところに、情熱のものすごさがあると思います。パワフルすぎます。本物ですよ、彼女は。先日もご本人が「他のレビュアーさんが素敵なレビューを書いてるので、恥ずかしい!」なんて謙遜メールをくださいましたが、音楽に人生賭けてるその心意気が誰にも負けてないというか、誰も勝てないくらいのパワフルさで、それが文章からもひしひしと伝わってきます。楽曲のチョイスとその愛情のぶっ飛ばし方が、ああ、こんな風に音楽を愛していいんだと、僕も勇気をもらっているし、きっと多くの人が感じ取っていることでしょう。

 それでは本田さんのレビューから、いくつか振り返ってみましょう。



Young Juvenile Youth『Animation』

 有名俳優を父に持つ彼女の音楽は、時としていろいろと叩かれたりもしているようですが、それはほとんどやっかみによるものが多いんだろうと思います。叩く人が多いとそれを「好きだ」と言うのは結構勇気が要るもの。でも本田さんの「素晴らしい楽曲ばかり」「今の日本に足りない音楽の穴を埋める」と迷い無く断言するその断言力。すごいです。本田さんの日頃の楽曲チョイス傾向からしてもこういう音楽に造形が深いのは明らかで、その人が言うんだから間違いないよなと完全に納得させられます。仕事でやってる評論家を揶揄するつもりはまったくないのですが、そういう評論とは根本的に異なる、この全身全霊で推薦する本田さんのパワーにはホント脱帽するばかりです。皆さん聴きましょう、ハイ。



Primula『Aquarius』

 水兵さんが全力で踊るシーンが頭から離れません。本田さんはこれをエレクトロニカシーンの異端児と評してますが、普通の人が言えば「なんだよ異端児って」となるだろうところを、本田さんが言うと「愛してるんだな」と感じられるから不思議です。レビューの中で本田さん自身の「恥ずかしい過去」をさらりと書いてたことも妙に記憶に残っています。2000年代初頭に毎週末クラブで遊んでいなかった僕にとってはなぜこれが「恥ずかしい」につながるのかは皆目検討もつかないのですけど、自分にとっても恥ずかしい時代の恥ずかしい何かというものは確実にあって、それを思い出しつつ「ああ、この音楽が恥ずかしさにつながる引金なんだなと思うと、想像が膨らんだりします。それにしても怪しいオッサンに魚肉ソーセージを渡されることで踊りだすという展開が、やっぱり一番頭から離れません。ユニークすぎます。



Language『Silencia』

 レビューで「“Language”といえば〜」とさも当たり前のように始まっちゃうけど、Languageって知りませんし。んで、「KAORIちゃんといえば、伸びやかでパワーのあるソウルフルな歌姫〜」と続いて、やっぱりKAORIちゃんって誰って聞きたいし。そんな無知と疑問と混乱などぶっちぎるように「Languageの楽曲は全て最高なのですが、私は「Silencia」がイチオシです!」とたたみかけてくる。これ、本田さんレビューの超弩級ポジティブパワーの真骨頂で、「Language知らないっていうのはサッカーの本田知らないとかラグビーの五郎丸知らないくらいに時代遅れなんじゃないか」と錯覚してしまいそうです。そんな気分で聴いてみると普通にしっとりとしたポップミュージックで、ああ、こういうのがエレクトロ・ポップ、シンセ・ポップというものなのかあと、知らないうちにこちらの音楽の幅が広がっていることに気がつきます。要するに、対象を愛している人の迷いの無さに、人はたじろぎつつ、従っちゃうということですね。こういうのは本田さんにしかできない、そんなレビューだと思うのです。




最後に、私、大島のレビューいくつか

 
 

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2015.8.5.寄稿