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700レビューを超えて



最後に、私、大島のレビューいくつか

 ええ、筆者自身が自分のことを客観視することはできませんので、今回は自分で「このレビュー気に入ってるんだ」というのをいくつか挙げてみたいと思います。



みたに『空の向こう』

 音楽を聴いていて、人生を感じたりすることがあります。そういう時は想いが先行して、独り善がりな人生論なんかを書いちゃったりします。その結果勘違いの駄文しか出てこないことがあり、というかそういうことばっかりですが、それが駄文になるのかならないのかは、結局は僕の想いをコントロールするだけの力を楽曲が持っているのかどうかということなのでしょう。いや、この少しばかり長い文章が駄文なのかそうではないのかは皆さんの判断に任せるとして、この曲はものすごくエモーショルで、抑えの利いたパフォーマンスが余計に感情を揺さぶるような、名曲であることは間違いないと思います。



およそ3『What A Wonderful Life』

 要するに、僕は、生きるのに前向きな歌が好きなんだと思います。もちろん常に後ろ向き下向きというような歌はほとんど無いのであって、ほとんどの歌が前向きなんだというのも事実で、だったらほぼ全部の歌が好きなんじゃねと言われると、それはやっぱり違うと思うのです。現状をきちんと認識し、それから逃げることなく正面から向き合い、向き合っちゃえば結局後ろ向きにならざるを得んでしょというようなところから、なお前向きに迎え撃つ力。経済理論にある論理性も、武器弾薬が持つ破壊力もいいけれど、歌が歌として持っている説明不能な前向き力。こういうのが、歌が素晴らしいと思う所以です。およそ3の歌はとてもいいですよ。そういうことを伝えようとすればするほど、またもや文章が無駄に長くなってしまって、申し訳ないなあといつも思います。



古賀小由実『なのはな』

 musiplの目的のひとつに、無名のアーチストに光をあてるというものがあります。音楽レーベルをやっていると、それなりの背景を持たないアーチストは既存のメディアには出てこないという事実も、何故そうなのかという理由もよくわかるのです。でも良い音楽には背景なんて関係なくて、声の良さ、楽曲の良さ、演奏の良さというものは個別に評価されるべきと思うのです。全国ネットの音楽番組がどんどん面白くなくなっていくのは背景主義だからであって、それとは対極の存在として、このサイトを頑張っていきたいといつも思っています。まだまだ無力ですが。この古賀小由実は本当に歌が良い。声も良いし、曲も良い。もっともっと知られるべき存在だと本当に思います。他にも地方のモールで歌う映像が印象的だった羽田りさ笑われながらも懸命にMCをして「ゴミじゃない」を歌っていた工藤ちゃん淡々と語るように歌うのが超印象的だったガリザベン等々、拾い上げたくて救い上げたくて、いや普通に知っておいた方が良いですよというような、そんなアーチストをこれからも頑張って発掘したいと思います。



中村佳穂『BEAUTIFUL DAYS』

 京都の大学生シンガー中村佳穂は朝の子供番組で風変わりな歌を歌ってて「なんだろコレ?」と思っていて、でもその時はシンガーの名前までは覚えていなくて、そのうちにいろいろな方面から名前を聞くようになって曲を聴いてみたらこりゃスンゲ良いじゃないかと思いましたです。すごく良いからレビューするわけで、こういう場合は「今書いとかなきゃ、売れてからでは遅すぎるし、負けたーって気分になるから、すぐ、ほらすぐ!」という、そういう焦りも出てくるわけですが、じゃあそんなの誰かが紹介して有名になっちゃうのなら、放っといて他の本当に無名なのを紹介しなよという内なる声も聞こえてこないわけではないのですが、でも、良い音楽を知ってしまえば紹介したくなるという性分もあって、まあなかなかチョイスは難しいのですが、でもやっぱり中村佳穂は紹介すべきだと思ったし、して良かったなあと今も思います。偶然にも本田みちよさんが始めたMUSIC SHARE京都の司会をやることになって、なんか縁があるのかなあとか思ったりしています。ええ、勝手な思いでしかないのですけど。



huenica『街の案内人』

 映像が過酷です。福島県双葉郡富岡町の写真がスライドで表示されるビデオは、おいおいそれ自分たちの宣伝に使っちゃうのかと普通は思うんですけど、このアーチストが所属するのはその町で活動していたレーベルで、だから、当事者。原発問題に付いてはいろいろな立場からの意見もあって、僕個人にももちろんあるんだけれども、それぞれの意見は同じじゃないにしても、これが考えさせる作品だなあというのは誰もが感じることではないでしょうか。musiplでは僕もそうだし松浦さんもそうだし、社会の事象について絡めてレビューを書くことが時々あります。音楽はただ芸術として社会と切り離されて存在するものではなくて、だから、その関わり方をレビューとして出していくことも重要な何かだなあと、僕個人はそういう気がしているのです。



夕焼けアフロ『おかえり』

 松浦さんから「大島さんは女性ボーカルを取り上げるところに特徴がある」と何度も言われて、そうかなあと思ってもレビューしているのを冷静に見るとやっぱそうだな、僕は女性ボーカルが好きなんだなあというのは歴然としています。いやあ、恥ずかしい。でも、男性ボーカルを無視しているのではなくて、この夕焼けアフロなんて本当に素敵で凄くて泣けちゃうボーカルだと思うのです。他にも植田章敬島津田四郎THE天国カーねじ梅タッシと思い出ナンセンスポジティブ米、などなどイイ男性ボーカルもたくさん取り上げてきてるのです。このレビューでは、歌が伝えようとしている何かを、僕なりに文章で表現したようなレビューになっています。曲を聴いてどんなレビューがいいのかなと考えて考えて考えて、ひとつのパターンに落ち着くわけですが、そのパターンもいくらか、幾種類かあったりして、このレビューのパターンは考えることと、何かに入り込むこととが合わさった時にしか出来ないものです。そういうパターンを引き出したということでも、やはりこの曲は素敵な何かを持っているわけだし、僕が感じて考えたような心理作業は、きっと多くのリスナーが知らないうちにやっていることなのだろうと思います。



 僕だけ本数が多くなってしまってすみませんすみません。でもまあ、一番たくさんレビューしてきたということで、勘弁してください。今回の記事で「アレも入れたいコレも入れたい」という気持ちが強くて、どうしても絞れませんでした。それでも当然絞って泣く泣く削った曲もあったので、それはまた次の機会に紹介できればと思います。

 あと、musiplにはセルフレビューという仕組みもあって、そこにアーチスト本人やファンの方々から推薦レビューをいただいています。通常のレビューとは違う位置付けなのでなかなか表面に出てこないのですが、これまで42本のセルフレビューをいただきました。この記事の最後としてそのリストを掲載しておきます。みなさんどうもありがとう。またこれからも投稿よろしくお願いします。

 
これまでのセルフレビュー
  阿佐ヶ谷ロマンティクス / UPMEDIUM11 / 荒井耕平 / 歌音★ヒロ / エリック・カルメン / O'tiempoman / ガウディーズ / Kaskelott / かせのまさよ / 上條恒彦 / きのこ帝国 / 響子&絶望ヘブン / 黒髪 / kevn / サイダーズ / ジェームス・ベル / 朱烈苦 Hei 1号 / スターダストレビュー / Starting Point Recurrence / Stanley Clarke, George Duke / Stephen Bishop / Ceiling Demons / ザ・タラコズ / Chuck Mangione / てあしくちびる / tinörks / dio2NOT / David Soul / Terraforming / TotentanZ / 長坂憲道 / ネム / nokimAoku dust mAu / パラボラ / 4TE / ブリキオーケストラ / Boston / MUGENLIFE / ゆるめるモ!×箱庭の室内楽 / RundabanSpoilerParty / lyrical school / The Watanabes /  

 
 

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2015.12.3.寄稿