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Belinda May『Beautiful Days』【結構計算された心地良いサウンド】

この歌声が沈んでるミックスが好き。曲調もポップで、シューゲイザーとはいいつつも明るいポップミュージックバンドといわれてもおかしくないし、そうなろうと思えばいつだって明るいポップバンドとして活躍することもできそうなのに、そうしない。サウンドとしてボーカルを前面に押し出していかないということはそういう意志の現れで、しかしそういう強い意志は往々にしてただの頑固になってしまって、なんだよ変なバンドだなというだけの偏屈サウンドになってしまう。ロックバンドでもそうだ。オレたちはポップスやってんじゃねえとか意固地になって楽器の鳴り音を大きくしてしまって、なんて歌ってるのかわかりゃしねえよみたいな残念な結果になることは多い。そりゃあただの明るいポップスバンドとは一線を画したいというのはわかるんだけれども、それよりリスナーの心地良さでしょと、残念なサウンドを聴くたびに思う。

この曲の場合サウンドがそんなにうるさくないということもあってか、ボーカルを沈めたところでそんなに残念な結果になっていない。そうか、ロックバンドの音は元々激しく鳴らしているのであって、それとはちょっと条件が違うよな。一瞬そう思ったけれども、よくよく聴いているとそんなに単純なことではない。結構計算されてるよ。ドラムもかなり沈められている。沈められているというより、遠くに飛ばされている。結果的にギター弾き語りと遠くで他のリズム隊みたいな構成になっていて、それが、マイク無しで歌ってるよみたいなサウンドだ。だからちょっとボーカル聴こえにくいけど我慢してよねとか、そんな強い意志を感じさせない控えめさ。こういうバンドが広めのカフェの片隅でインストアライブやってて、偶然お茶しにいってて何か鳴ってるぞみたいな、スピーカーから流れてくるBGMとは全然違う心地良さだなみたいな、そんな清涼感。押し付けがましくもなく、かといってちゃんと主張はあって、なおかつ曲として美しい。こんな音楽が在る日常は、そりゃあBeautiful Daysに決まってるよなあと感心してしまう。

(2019.10.28) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl