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UNIDOTS『あなたは嘘つきだ』【自分の側のエゴを殺すことでしか誰かを愛することは出来ないんですよ】

この美形シンガーは誰だろう、昨今はモデルを前面に押し出したバンドMVも多いのでこういう美形の人が全編に渡って登場するMVは要注意だ、いったい誰だろう誰だろう、でもどこかで見たことあるような気もする、誰だろう誰だろう、とか思ってチェックしたらシンガー本人だった。瑞葵さん。彼女とベーシストのコンノツグヒトによるユニット。で、この瑞葵さんどこかで見たような気がすると思ってたら、2014年にレビューしたイツエというバンドのボーカリストだった。

その時の曲が『言葉は嘘をつく』で、この曲が『あなたは嘘つきだ』。なんか出来過ぎたリレーのような感じで興味深い。その6年前のレビューでは「少しばかりハスキーな女性ボーカルがバンドサウンドに乗って深い海の底を感じさせる」と書いていたが、この曲ではハスキーさなど欠片もなくて、どこまでも伸びきっていくクリアーさを見せている。イツエ時代の曲を聴き返してみると言うほどハスキーでもなかったかもという気がしないではないが、それでもこの曲の声とは別モノに感じられる。このMVでは冒頭から瑞葵さんが海辺で花を抱えながら笑顔で歌っている。だが最後の最後、曲が終わってから洗面所的なところで顔を洗って、化粧を落としたスッピン姿を見せていて、それが海辺での顔とはまったく違っていて驚く。そのスッピンも壇蜜を彷彿とさせる美形なのだが、やはり別モノであることは間違いなく、ああ、女性はそういうところで嘘をつくよなあと感じさせられる。いや、それを嘘と呼ぶべきか呼ばざるべきかは意見のわかれるところだろうけれど。例えば半年ほど前に公開している『東京の精神』という曲のMVで見せる瑞葵さんのメイクはどちらかというとかなりスッピンに近いもの。何が本当で何が嘘というのではなく、どれも彼女のバリエーションのひとつということなのだろう。そのことを示すように『東京の精神』のMVでは曲全編で歌う彼女のアップを写すのだが、途中でメイクの度合いが変化していく。そのどれもが瑞葵さんであって、どれが嘘で騙されたというのは思いたい理想像を勝手に相手に求めようとする側のエゴでしかないと諭されているような気にもなる。

この曲の中で「誰かを愛したい、自分を殺しても」と歌っていて、それは自分の側のエゴを殺すことでしか誰かを愛することは出来ないんですよという教えのような気がしてならない。それは「言葉は嘘をつく」「あなたは嘘つきだ」という曲タイトルを肯定すること自体が実はそもそもダメなんだと、突きつける熱量を持って迫ってくるように響いた。

(2020.3.27) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl