<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

Arakezuri『リヴソング』【自分の幸せくらい自分で決めていいんだよ】

360度カメラを使った映像。新しい技術が出てくると新しい映像も生まれてくる。360度も見てる人がグルグル回すように視点を変えられるような映像にもできれば、こうして魚眼のような映像にすることもできる。しかし技術の結果をただ使っていても他と同じ映像が乱立することになるので、そこからさらにひとひねり、自分たちらしさというものを出していかないと、すぐに陳腐な映像になってしまう。その点、彼らは360度カメラでノーカット撮影にチャレンジしていて面白い。メンバー全員が映っているシーンがあるので、三脚を立てて撮影しているのだろうけれど、ギターソロの部分にさしかかると、こともあろうにギタリストがその三脚をつかんで走り回る。おいおいギターソロなのにギター弾かなくていいんかというツッコミをついついしてしまいそうになるが、結果的にその部分でギターが目立っているのは間違いないので、ああ、MVならではのギターソロのひとつの形なのかもしれないなあと思った。

インパクトのある映像が音楽とは関係なく人目を引くのは事実で、その時代時代による新技術を駆使したりしてインパクトのある映像を作るのは音楽を広める上でも重要だ。このMVもそうやって音楽を広めるためのインパクト映像を作ろうとして、その部分では成功しているといえる。だが、もしそこに流れる音楽がつまらないものだったらどうだろう。映像がインパクトあるだけに音楽の陳腐さとのギャップに、見てる人は耐えられなくなってくるはずだ。しかし、このMV、聴けば聴くほど音楽自体の良さに引き込まれてくる。滋賀県で活動するArakezuriというバンド。1年半ほど前にもレビューしているが、その時の曲は今回とは違ったシリアスで切ないテイストの曲だった。そのシリアスさもMVの雰囲気が影響してそう感じた部分も大きく、今回の曲『リブソング』は炎天下の野球場というシチュエーションから明るさ満点のイメージを感じてしまうものの、曲自体はそんなに能天気でもなく、自分の生き方に迷っている人たちへの鼓舞といった意外とシリアスな内容を歌っている。先がなかなか見通せない時代に「自分の幸せくらい自分で決めていいんだよ」と歌っている。サウンドも驚くほどしっかりとしたもので、聴いている人の視線を上に向けさせようとする歌詞をサウンドでも支えるような、ズッシリとした安定感を見せている。売れようとして都会にばかり意識が向いているバンドではなく、滋賀県で地道に活動しているバンドがこのような力強い曲を鳴らしていて、心強い気分にさせられる。

(2020.7.3) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


Arakezuri, review, 大島栄二

Posted by musipl