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電気グルーヴ『いちご娘はひとりっ子』【電気グルーヴ、日本的ながらどこまでもエトランゼな存在】

電気グルーヴという日本的ながら、どこまでもエトランゼな存在。ジョイ・ディヴィジョン、ニューオーダー、レイヴ・カルチャーとの共振、同時に、日本内でのポジショニングでは「箍が外れた」ものより、ディスコ、日本語の妙が求められる磁場でのディレンマもあり、ラブ・パレードの先に咲いたのは桃源郷だったのも今や遥か昔。

DJ、トラックメイカー、多くの面で世界にも名を響かす石野卓球氏と俳優、CM、ラジオなど幅広く活躍するピエール瀧氏をメインに活動を続ける電気グルーヴ。昨今でも、バブル期を象徴するおねェタレントといえる日出郎氏の「燃える!バルセロナ」をリブートしながら、作品のリリース・ペースはライブ盤からベスト盤といえるようなものに意匠を加えたものから積極性を増している。そして、行事でもないが、『30』。

筆者が感慨深かったのは01年7月リリースの『The Last Supper』。メジャーデビュー10周年記念のセルフ・トリビュート・アルバム。初回盤は、銀色の細長いジャケットに、二枚のディスクが入っており、彼らをめぐるなじみのメンバーがリミックス、楽曲参加などで賑やかながら淑やかな印象もおぼえた。POLYSICSの「N.O.」のカバーは鮮烈でよく聴き、クラブでも踊った。そして、2009年の『20』。その前にオリジナル・アルバムの『J-POP』、『YELLOW』というテクノ・オリエンティッドな連作をリリースした上でのアニバーサリー・マテリアル。ただ、テクノ・ポップ、遊び心溢れる彼ららしい歌謡性あふれるうたものから、突き抜けるようなアシッドさより、電気グルーヴという大きくなった意味合いを彼らが対象化しているような内容で、そこに、さらりと華やかに見えもするテクノ・ミュージックの裏側を描くような「タランチュラ」のような曲がアクセントとして余韻を残し、アルバムとしての完成度も高かった。

さて、平成の終わりの始めに彼らは30周年の区切りを迎え、『30』というアルバムをリリースする。「電気グルーヴ10周年のうた 2019」や「Slow Motion」の30周年ミックス、過去曲群のアップデイトや今の温度でのものなど含めて充実した内容になっている。ライヴで発表されたもののマッシュアップだったり、と。でも、やはり、彼らの最大のヒット曲にして、これからも歌い継がれてゆくだろう「Shangri-La」がInga Humpeをフィーチャリングされて、どこかムーディーでジャジーなアレンジメントになって入っているのが嬉しい。もちろん、エレクトロニカな変調もありながら。彼らは真摯な知性と諧謔精神とともに、音楽シーンの動きとエレクトロニック・ミュージックの急激な流れを見据えてきたと思う。だからこそ、何度も筆を入れ続ける過程で見える「Shangri-La」のテンポや声やアレンジメントやそのほかの要素で切なさも鋭さも拮抗する。(シャングリラがない瀬に、)軋轢はなし、といえるテンポ、でも、それこそが生きる、生き延びるということなのだと思う。

アルバムでそれぞれは確認していただくとしても、この『いちご娘はひとりっ子』をMVで出してくるのも相変わらずで、『30』だから、過去作群からの融合と、それを楽しみながら聴くと興味深いが、また、プエルトリコでもなく、J-POPなどのカテゴリーでもなく、2019年の、どこかで適度なムードで踊れるのがなにより良い。好い加減で適度でいるのが厄介な世に。

(※2019.3.18時点で、動画が削除されているのを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます。)

(2019.1.26) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))


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review, 松浦達

Posted by musipl