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The Shiawase『八重歯のキョウコちゃん』【普通に筋肉だけで走ってるような不格好なまでの猪突猛進ぶりが本当に愉快】

イイ。イイぞ若者。三重県のロックバンドらしいけど、この田舎者っぽい猪突猛進さがとても良い。音楽というものがどんどん進化していって、ありとあらゆる表現が既に誰かにやられてて、どんな隙間にもスキマ産業的な音楽ジャンルが既に存在してて、そのスキマにもたくさんのバンドがひしめき合ってて、それでも過去の誰かがやった音楽なんてやりたくないのは表現者の常で、若者の音楽はこれでもかと複雑になったり速くなったり。生演奏しかなかった昔だったら絶対にできなかった表現もDTMでいろいろとできるし。そんな演奏人間じゃ無理だろうと思うようなサウンドも今では普通に存在している。それはコンピューターによる一種のドーピングのようなサウンド表現だと思っていて、100mを人間が5秒で走ってるみたいなことが音楽の世界では当たり前のように起こってて、リスナーも当たり前だと受け入れている。スポーツみたいにドーピングの反則なんてないからね。どんどんやっていく。バンドで曲作りをしてるリーダーが「ここはこういうサウンドなんだよ」と主張しても「そんなん無理。弾けるわけないやろアホか」で終わってたのに、今や「じゃあパソコンで打込むからいいや、お前クビ」ということでバンドやめてひとりプロデューサーとしてやってる人も少なくない。

そんなだからか、普通に筋肉だけで走ってるようなサウンドが逆に新鮮。不格好なまでの猪突猛進ぶりが本当に愉快。スタイルもすらっとしてないあんちゃんがアフロを振り乱しながら、ギターをかなり上のポジションで抱えて歌う。カッコいい。いや、カッコよくはないんだけれど、実に爽快。音楽やってモテるぞと本気で思ってそうでステキ。激しいストロークで弾きまくってるのに全然速くない。しかも音がかなりペラペラ。めっちゃカッコいい。これらの要素すべてが、現代の価値観からするとダサいの一言で片付けられてしまうようなもののはずなのに、それがこうしてひとつのサウンドと動画になった時に、なんとカッコよくなってしまうのだろうか。本当に不思議。MVの中で歌の主人公たるギターボーカル仲井くんが、教室にひとりでいるキョウコちゃんの近くに寄っていって、物思いにふけっている顔の10cm先でギターを弾きまくって歌いまくっている。その姿がかなりアヤシイ。歌詞によれば6年間片想いをしているらしく、もう完全にストーカーやんそれみたいな感じで、ウザいし恐いけど、カッコいい。この八重歯のキョウコちゃんが、めちゃ美人とかでもなんでもないのに、MVを見ているとすごく可愛く思えてくるのは、この歌がキョウコちゃん180%推しみたいな言葉連発だからなのだろう。とにかくその一途さを恥ずかしげもなく歌い切っているのが、この曲の魅力だしパワーなのだろう。究極のダサカッコよさ。バンド名がThe Shiawaseっていうのも、ストレート過ぎるだろうと感じ無くもないけれど、そんなこっち側の思考の方がダメなんじゃないかと思わされるくらいに、パワフルでステキだった。

(2019.8.13) (レビュアー:大島栄二)


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review, The Shiawase, 大島栄二

Posted by musipl