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テジナ『You Are My Sunshine』【いろいろな時代を思い出してニヤニヤさせてもらえるデジャヴサウンド】

この既視感、デジャヴ。なんだろうこれ、なんだろうこれ。そんなことを感じる音楽に出会うことは多々ある。そう感じた時に「ああ、これはパクリだ」などと考えて距離を置く人は多かろう。だが、それでいいのか。それはちょっともったいないぞ、と思う。音楽表現もほぼ出尽くした感のある昨今、そりゃあ200年前ならエレキギターも無かっただろうしシンセなんかもっと無かったわけで、アンプにつないでギュウィーンと鳴らせばもう時代の最先端、ピコピコ鳴らせば科学の粋を集めたサウンドとして、ロックとかテクノの未開拓荒野を突き進めた時代ならばまだしも、新しい種類の音楽なんてどこの重箱の隅を突けば出てくるんだという2010年代後半。そんな「パクリだ」シールドを張り始めたら死ぬまでプレスリーとかビートルズを聴く以外になくなる。そりゃそうでしょう。そういう鬼籍の音楽を聴くのか、それとも新しい世代の音楽を聴くのかの分かれ目は、パクリだシールドを自ら取り払えるかどうかにかかっていると思われる。

3年前から始まったスターウォーズ新シリーズ。エピソード7を観て何を感じたのかというと、ああ、これはエピソード4だなということ。僕はスターウォーズが大好きで、過去の全作品をそれぞれ50回ずつくらいは観ている。何度も観てすべてのシーンが大好きでほぼ記憶してて、だったらもう観なくてもいいだろうというレベルなのだが、そんな僕の叶わぬ想いが「エピソード4を初めての気持ちで観たい」というもので、そんなこと叶うはずもないのだが、エピソード7を観たとき、その夢が叶ったような気がした。
デジャヴというのは、ざっくりといえば、明らかに初めての体験なのに過去に体験した何かを思い浮かべるというもので、それを「前に見たことある」から無駄な時間を過ごしてしまったのか、「前に見たことある」何かをまた体験できた素晴らしいことなのか、それは人によって判断が分かれるのだろうし、どう判断するのかで、その人の人生そのものの色合いが変わってくるように思う。

ずいぶん前置きが長くなってしまったが、このテジナというバンドのこの曲、聴いていて「これはヒカシューだ」と感じた。いや、ジャンル的にはフュージョン(とYouTubeの説明文に書いてある)だし、ヒカシューとは似ても似つかないと言ってもいいのかもしれない。だがこの怪しさ、おどろおどろしさ。内面を見せようとしない仮面感。罵倒されるかもしれないなという覚悟をしつつも、僕はこれをヒカシューだと感じたのだ。彼らが登場してきた頃の世情と2018年のそれとは違う訳で、今の20歳くらいの人たちがヒカシューを聴いたらきっと「?」となるだろうし、アレが出てきた当時の文化的背景と一緒に聴かないと理解できない何かというものは確実にあるわけで、その当時にヒカシューに感じたその何かというものを、2010年代後半の今に感じるためには、今ヒカシューを聴くのではダメで、こういう現代の何かとフィットしたおどろおどろしい音楽なのだろう。

それにしてもギターのソロパートで響かせているこのフレーズ群がとても面白くて秀逸。ヒカシュー以前の時代から音楽をたくさん聴いている人にとっては、いろいろな時代を思い出してニヤニヤさせてもらえるサウンドなのではないだろうか。

(2018.9.20) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl