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マッシュとアネモネ『シーサイド』【このふてぶてしくも自己主張に躊躇のないMV】

この投げやり感は一体なんだろうか。投げやりなのに、魅力的で。画面中央をひたすら歩いているのがボーカルのもちこで、絶世の美女ではないし、歩き方も脇を閉めてないしなんとなくだらんと手を振っているだけで魅力的な歩き方を心がけようという意志がまったく見られない。普通に歩いているだけ。フォトジェニックな被写体とはほど遠い印象なんだけれども、それが心地良くないということにはつながってなくて。サウンドの仕上がりも、声をキレイにしようという意図がまったく感じられず。美しい声を出すためのボイトレをした風でもなければ、エフェクターなどの後処理で聴きやすくしようともしていない感じで、ただそのまま歌っている素の声によるボーカルのように聴こえる。聴きやすくしようとしていないのだから、一部の人には聴きにくいかもしれない。だが、それで不快になるわけではまったくなくて、むしろもちこの等身大に接しているような、親しい友人のような心地良さがある。素のままで歌っているということは、彼女の本音が隠されること無く歌われているということでもあり、芯の強さだったりリアルな弱さだったりとが歌そのものに出ている。今後彼らがバンドとしてキャリアを積んでいく中で、そういう素のままを否定するスタッフがきっと現れ、そのアイディアや技術によって磨かれていったりするかもしれない。単にアイディアに逆らうだけで変化を拒むのでは進化のないつまらないバンドにしかならない。そういう磨かれに角を取られてありきたりなバンドになってしまうのか、それとも頑なに自分の棘を失うことなくむしろ尖らせることに成功するのか。このふてぶてしくも自己主張に躊躇のないMVを見る限り、良い方向を期待できそうな、そんな予感を感じさせてくれる。

(2019.10.3) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl