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小谷美紗子『忘れ日和』【この小谷美紗子の軽いタッチの曲のなんと安定していることか】

5年8ヶ月ぶりのオリジナルアルバムか。その間なにをしているんだろうと思ったりもするが、20周年企画とか、ライブとか、まあいろいろ。毎年新作をリリースしていかなければ忘れられるぞとレコード会社に追い立てられるのが当たり前で、そのせいで才能を枯渇させるアーチストがたくさんいたことを考えれば、10曲のオリジナル曲を書きためるのに5年以上の月日を費やせるというのは、日本の音楽状況も多少進んだといってもいいのかもしれない。

小谷美紗子のことを熱心に追いかけ続けてきたわけじゃないから断定的なことは言えないけれど、彼女の曲で印象に強く残るのはかなり深刻そうなテンションで魂の奥底からグサリと刺さるようなメッセージを、メッセージ然とした風もない感じで歌い上げているというイメージで、批判を怖れずに言うならば、演歌、それも北国の冬のド演歌の様相さえ感じさせるもの。それに比べるとこの曲のなんと軽やかなことか。軽いタッチのピアノの音が鳴り響き、それを重くさせないようなサポートをするかのようなバンドサウンド。特にドラムが良い。そのバンドパートと弾き語りパートが交互に展開して、曲に勢いをつける。ボーカルにエフェクトを強めにかけたかの印象さえある歌声がリズムに乗って跳ねた感じで小気味良い。昨今はピアノ弾き語りのアーチストも多数出てきて、ライブ構成とかアルバムのバランスとかもあるからか、それともプロデューサーの思いつきに振り回されるのか、ヘビーな曲とライトな曲を混ぜこぜにする過程で自らのスタンスを見失いそうになる様子を目にすることも多いが、そんな中でこの小谷美紗子の軽いタッチの曲のなんと安定していることか。「今夜は忘れ日和 何もかも yeah!」って歌詞もいい。何もかもの後にどんな言葉が来るんだろうか、彼女が出した結論は何だろうかとか考えていると「yeah」と片付けられてしまう。何も難しいことなんて考えないで、全部Yeahで済ませればいいじゃないということなのだろうか。うん、それもいい。んで、新しい5年8ヶ月ぶりのオリジナルアルバムのタイトルが『yeh』なので、結局は今回の一番キモなメッセージがこの言葉なのかもしれない。

(2019.11.9) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二, 小谷美紗子

Posted by musipl