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Official髭男dism『Universe』
【自分たちを信じて王道を進んできたこれまでの歩み】

この洗練されたポップネスを聴くと、本当に彼らは成長したよなあと思う。いや、成長という表現は実体に追いついてなくて、進化とか、昇華とか、変体とか、とにかく進む方向とスピードが並ではなく想像をはるかに超えている。思えば2015年に初めてレビューしたときはまだインディーズで、彼らのことを失礼にも「上質の髭男爵」なんて表現していた。当時はきっと髭男爵の知名度もそこそこあったのだろうか。だとしても、その表現は無いよな。話を戻すけれど、インディーズで売れない頃にそれでも体裁を保っていられるのはロックの独壇場で、それは大人の抱える矛盾にロックで抵抗するという反体制的な、地下活動的なイメージがフィットするからだ。最近ではアイドル業界にも地下アイドルというジャンルがあるけれど、最初から大人が戦略として地下からスタートさせるという活動でなければ、地下アイドルが地上に浮かび上がる可能性は極めて少ない。それでも地下アイドルというジャンルがそこそこに認知されているので活動もしやすいが、ポップバンドでインディーズというのは、もちろんライブハウスで活動していけるわけだけれど、そこにはただ単に売れていないだけのバンドという印象がついて回る。反体制ではないのだから、売れてナンボなのだ、ポップというジャンルは。売れないロックバンドのメンバーが売れなくともそこそこ自分たちの活動に酔えて満足できるのに対して、売れないポップバンドのモチベーションは維持することがなかなか難しく、数年活動して芽が出なければ解散に至る割合は売れないロックバンドのそれと較べてかなり高いものになる。それなのに彼らが解散などに至らずにどんどん伸びて今に至るのは、やはり彼らが持っていたセンスと素質の賜物だろう。センスと素質が良い作品を生み出すし、たまたまの通りすがりの偶然リスナーをファンに変えるし、何より、そのセンスと素質と結果の作品の良さが、本人たちの未来を信じる強さにつながる。

今回の曲はドラえもんの映画主題歌だそうだ。ドラえもんの映画に求められるのは、冒険のハラハラとけっして失うことの無い希望と友情であるはずで、それを完璧に満たす曲を作るというのは容易ではない。だが、どうだろうこの曲。弱い心にしっかりと寄り添いながらも未来への可能性と希望を100%感じさせてくれる。これまでも多くのバンドがドラえもんの曲を作ってきて、どれも一流のアーチストなので必要最低限の求められた要素を満たしてはいるものの、どことなく彼らの通常の作品からドラえもんに寄せてきたという意図を感じることが少なくなかった。しかしOfficial髭男dismの『Universe』にはそんな寄せがまったく感じられず、通常の自分たちの作品を作り続ける過程の中にしっかりと位置している。それはまるで彼ら自身の、自分たちを信じて王道を進んできたこれまでの歩みこそが、ドラえもんの世界にある「未来への可能性と希望」というテーマそのもので、まだ不確かだった時代にそれを強く信じてきた者たちだからこそ生み出すことができた楽曲だからなのではないだろうか。本当に名曲だ。

(2021.4.17) (レビュアー:大島栄二)


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Official髭男dism, review, 大島栄二

Posted by musipl