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KAN+秦 基博『カサナルキセキ』
【真剣なテイストで面白いことをやった方がより面白みが増すという不思議な曲】

すごくとっ散らかっていると思う。KANと秦 基博が共作しているのならさぞや整った良い曲だろうと思って聴いてみると、これ。いや、「これ」とか言っちゃいかんのはわかってる。そんなこと言うと両方のファンから怒られそうでこわい。だが、やっぱりとっ散らかっているという気がするのは仕方ない。2人の歌声がぶつかって、結果としてどちらの歌声もちゃんと聴けないように感じるのだ。

この『カサナルキセキ』は2月にリリースされた秦 基博のシングル『泣き笑いのエピソード』4曲目に収録された『カサナル』と、昨年11月にリリースされたKANのアルバム『23歳』に収録された『キセキ』を合体させたものらしい。コード進行もテンポも同じにして別々に作られた曲を、後から合成させたらしい。だから、この曲をレコーディングする際に、両者は互いの曲を聴きながらやったのではないだろう。もしも同じステージで一緒に演奏するとしたら、相手の声が聴こえた状態ではかなりやりにくいんじゃないかなあと想像する。もちろん2人とも音楽のプロなわけで、多少違うメロディが同時に鳴っていたとしても自分のパートを遂行することは可能だろうけれど、聴いてる素人としては、両方を追うことは難し過ぎてお手上げだ。

この曲が配信される日に、2人は謝罪会見と称する42分もの動画を公開している。スーツに身を固めた2人が居並ぶ貴社の質問に答えつつ、謝罪をするというもの。だがもちろんこれは謝罪などではなくてプロモーションの企画だ。謝罪という形式で、今回の2つの曲が合体する経緯などを説明していて、42分の動画の最後にはこのMVが付いている。会見の途中、曲ができる流れを時系列で解説しているのに、「会合を持った高級焼き鳥店はどこなのか」とか「何を食べたのか」といったどうでもいいことを質問されたりなど、そこはかとなくおかしい。KANっぽいなあと思う。2つの元曲はそれぞれ真剣というかマジモードの曲であることは間違い無いけれど、それらをあとで合体させるという前提がすでにおかしくて、マジとは真逆の、一種のギャグなのではないかと思う。ふざけたテイストで面白いことをやるよりも、真剣なテイストで面白いことをやった方がより面白みが増すということを、謝罪会見コントとセットで見せてくれているようでもある。

彼ら2人の曲は、やはりそれぞれ聴いた方がいいんじゃないかと思う。KANの『エキストラ』とか、秦 基博の『泣き笑いのエピソード』とか、リンクを貼っておくので余裕ある人は是非。朝ドラで何度も聴いたよという人も、フルで聴くと朝の1分程度とはまた違った曲にも聴こえてくるので、是非に。

(2021.5.22) (レビュアー:大島栄二)


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KAN, review, 大島栄二, 秦 基博

Posted by musipl