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小沢健二『泣いちゃう』
【ああ、人間の本質というのはそんなに変わらないものだな】

小沢健二、自由だなあ。何やってるんだろう彼は今。海外アーチストだと数年かけて世界を回ってコンサートして、数年休養して、またアルバム作って世界を駆け巡るみたいな人はいるけれど、そういうアーチストの数年休養は音楽活動サイクルの中のパートだから、それを持ってあいつら活動してるんかなんてことは思わないし、数年休養してもなお活動する時期の収益で贅沢な暮らしを維持できるんだろうなあと想像できる。だが、小沢健二の数年休養は本当にこれで一般リスナーの前から消えてしまうんじゃないだろうかと思っちゃう感じだし、時折活動再開してもなんか特殊なライブだったり、数カ所のライブだったりで、それで食っていけるのかと、まったくの余計なお世話な心配をしてしまう。

ま、彼の暮らしや収入なんてリスナーからはどうでも良い話で、彼の活動が本当に彼の気まぐれで進められて、熱心なファンがいるものだから一応ビジネスにもなるのだろうけれどレーベルなんかもちゃんと動いて商品になったりするけれど、その気まぐれな作品発表とか、それでいいんかと毎回思う。しかしビジネスの作法に則った生き方というか音楽活動をするようになったらその方ががっかりするのかもしれない。

この曲、社会問題に触れているような歌詞が並んでいるのに、深刻さとか切迫感というものが全く感じられない。メロディやアレンジといった音楽の部分が深刻さからかけ離れているのだろうし、小沢健二の歌い方も妙に軽くて、ふざけてるのかというくらいの軽いテイスト。泣いちゃうとかいってるけれど絶対に泣いてないよねと思うし、いろいろ語った挙句に「世のありさまを呪いつつ踊っちゃいます」と歌う。それもかなり楽しげに、吹っ切れた感じで。ああ、この人は世の中の常識とか普通とかにはまったく縛られずに生きることができる能力の持ち主なんだなということを再認識する。そういうアーチストの有りようが好きか嫌いかは人によって大きく分かれるところだろうけれど、久しぶりに聴いたオザケンの新曲には、そんなオザケンっぷりがたっぷりと詰まってて、ああ、このコロナ禍でオザケンもそれなりに不満とかは感じたり抱えたりしているんだろうけれど、人間の本質というのはそんなに変わらないものだなと実感できて、なんか嬉しくなってきた。

(2021.6.12) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl