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かろうじて人間『横浜よこよこ』【一種の禁じ手を敢えて冒しているのではないだろうか】

不思議な非現実感が漂う。対立するような概念の言葉が交互に並べられてて、その連続が一定のイメージを思い浮かべることを妨げているのだけれど、ずっと聴いているうちにその「イメージが像を結ばない」ということこそひとつの表現なのではないだろうかという感覚に陥ってくる。通常のバンドサウンドであればリズムを司るドラムとベースの低音が許容値超えなまでに削られていて、むしろギターのカッティングの方が低音をブイブイいわせている。曲全体を貫いている変拍子もそうだし、迫力とは真逆のテイストを持つボーカルもそうだし、どれもこれも「通常」「普通」というものと距離を取ろう、距離を取ろうとしているように感じられてならない。普通であることを拒否して個性を押し出すことが表現というものの本来だと思うけれど、現実には普通であることの枠を外れることを極力避けようとするし、枠を外れた表現を卓越していると認め受け入れる度量のあるリスナーも実は少ない。そういう中、この「かろうじて人間」という、これまたギリギリのラインを生きているという名前のバンドが表現しているものは、一種の禁じ手を敢えて冒しているのではないだろうかという気さえしてくる。「普通と違うからちょっとね」などと言う人には届かないのかもしれないが、その「普通とは違う」ということは一体なんなのかを考えてみる良い機会なのかもしれない。そういうことを考えてみることが、自分が知らないうちに持ってしまっている「殻」から脱出するための有効な手段なのだ。

(2017.9.14) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl