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chikyunokiki『明日の感覚』【人はまた眠らない街でグルグルグルと回り続けていく】

何か得をしようと思うと、それは自分の現実以上の何かを求めるようなもので、自分の現実を素直に受け入れられさえすれば無理に足掻く必要も無くなるのだが、その境地に到達するのはなかなかに難しい。都会に行けば何かが変わるとか、あの人とコネクションができれば何かが変わるとか、望むのは勝手だが、では都会に行ったりコネを作ったりしたところで、現実は何も変わらないし、そこでもし何らかの変化があったところで、自分を変えずに何かを得たという体験は、努力を怠って得をすることをさらに求めようという悪循環にさらに深く陥ってしまう入口になってしまう。

それでも都会というきらびやかな場所は凡人に万能感を与える力を持っていて、万能は言い過ぎかもしれないが、自分がちょっとだけエラくなったような気にさせる魔力くらいはある。それが自分を追い込み、どこに連れて行くのか。満員列車に乗り込めば一体どこに行けるというのか。それはただ同じ場所をグルグルと回り続けているということなど誰だって知っているというのに。それでも回り続けているということに漠たる安堵感でもあるのか、それとも回り続けさせられることでトリップしてしまっているのか。人はまた眠らない街でグルグルグルと回り続けていく。

chikyunokikiというバンドの奏でる音楽はとても優しく、のんびりとしたテンポの中で温かみのあるボーカルが軽やかに歌ってくれている。その肌触りのソフトさとは裏腹に、言葉の奥に秘められたテーマは意外と辛辣で、僕らがちょっとずつ、身の程にあった程度の得を求めている様を肯定しつつチクリと批判しているように感じる。それなのに優しく感じるのは、きっと彼らもまた僕らと同じフィールドに立って現状を見ているからなのだと思う。

(2018.3.29) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl