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あのね『眠らない夢を見た日』【音楽のちょっとした力というのは人の背中を押すのに有効なんだなあ】

東京を中心に活動する3人組のガールズバンド。普通の楽曲であれば明確に分かれているAメロBメロサビみたいな展開がなくて淡々と歌われる。いや、あるんだけれど、ここがサビですよ聴きどころですよみたいなアピールを一切感じない。そういう構成だと全体のイメージがぼやけてしまって、聴いた後に何にも残らないんだけれど、この曲の場合そうはならず、曲全部で押し寄せてくるような強い印象が残る。曲の冒頭で「期待に胸が膨らんでは眠れないの」という歌詞がまずインパクトを持って迫ってくる。眠れないほどの期待ってなんだろう、どんなワクワクなんだろう。とても気になる。そこから始まる歌詞ではどちらかというと期待どころか悲しみとか絶望という言葉が似合うような自己否定ワードが並んでて、それなのに「私は行けるよどこまでも行ける」とか根拠のないポジティブさが展開していく。そうだ、人が何かにチャレンジする時って根拠を頼りにしようとすると必ず足が止まるわけで、無根拠な無謀ともいえる心持ちでなければ、一歩たりとも前進などできやしない。もちろんそういう時は不安だし、ビビる。だから本当はワクワクなんてないのだろうし、胸が膨らむような期待なんて無かったりもする。だけど、だからこそ、「期待に胸が膨らんで眠れない」と自分に偽って鼓舞するくらいでないとダメなのだ。この曲では冒頭からその無根拠な鼓舞をドーンと打ち出してて、だからこっちも半分騙されたような感じになって、ちょっとだけワクワクして聴きはじめてみることになる。サウンドは結構淡く、けっしてパワフルとはいえないようなかぼそい声で歌われる。何かが成功するような期待はそんなに持てないけれど、肩に無理な力が入っている感じはまったくなくて、ああ、こういう人が何かにチャレンジすればちょっとくらいは前に進めるだろうという気分になるし、そんなに前に進まなくても楽しみながら日々を過ごせるかもしれないなと微笑ましくなる。そんな前に進もうという意思を、スネアの連打による速いビートが後押ししてくれているようで、やはり音楽のちょっとした力というのは人の背中を押すのに有効なんだなあと再認識させてくれる。

(2019.10.1) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl