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Lucky Kilimanjaro『Drawing!』
【閉塞感の中で出会った、僕らを突き動かそうとするエネルギー】

約1年半前に彼らのレビューをした時に「閉塞感の打開への意志が強く打ち出されていて心地良い」と書いた。ひとりの夜という押しつぶされそうな闇の中をズンズンと突き進む心地良さ。心地良さというか、突破力のようなものを感じたのだった。それからさらに前のレビューの頃よりも「ポップに純化したミュージック9割以上という印象だったが、この曲では歌詞にかなりの重点を置いた作品に仕上がっていて」と書いている。あらためて聴き直すとこれポップ度120%やんと今は思うのだけれども。

それからこの春。世相は前回よりもさらに閉塞感に覆われていて。前回が特に理由を求めることが難しいけれど若者世代を中心に広がっている閉塞感だったのに対し、今は明らかな理由による閉塞感。そもそも家から出たらいけないんだぞ。これを閉塞感と言わずして何と言おうか。そんな中で出会うこの『Drawing』。ああ、解放してくれる。開放してくれる。閉塞感とは言葉の通り「感」なのであって、意識の中にある縛りに過ぎない。連日テレビで繰り返される感染者何人、死者何人という数字。自粛せよ、我慢しろの嵐。そりゃあ気分もダウンするよ。外出を控えて筋力も衰えれば、それが精神に影響を与えない訳がない。物理的に家の中に閉じ込められるんだから、そりゃあ閉塞感に打ちひしがれるのも無理はない。

だが、繰り返すけれど、閉塞感なんてただの「感」だ。その中でどう前を向くのかのカギも、やはり心持ちひとつなんだろう。この曲では絵が得意な人に対して「とにかく描こうよ」というメッセージが展開されている。

   ステレオタイプが街をモノクロにしてる
   描けるかどうかは求められてない
   描きたいかどうかだ

そのメッセージは別に直接的に絵描きにだけ向けられているのではないだろう。すべての人に「前を向け、前に進め。できないのはできないと思い込まされているからだ」と言っているように聴こえてならない。

今みたいな状況下だからそんな風に聴こえるのか、それとも平常時にもそんな風に聴くことができるのかはよくわからない。物理的に金銭的に追い込まれてしまっている人に心の持ちようだけでポジティブになれということが無茶であり無責任であることだってある。しかし、大多数の人は心の持ちよう次第で前を向ける余地があるんじゃないだろうか。Lucky Kilimanjaroのこの曲は、1年半前の曲にも増して僕らを突き動かそうとするエネルギーに溢れている。そして同時に、カラフルなポップネスに満ちている。素晴らしいよ。

(2020.4.11) (レビュアー:大島栄二)


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Lucky Kilimanjaro, review, 大島栄二

Posted by musipl