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The Rolling Stones『Living In A Ghost Town』【家に籠る澱んだ気持ちをストーンズだって同じように味わっているのかと思うと多少気がまぎれる】

外出自粛の日々。日本では自粛だけれど海外では禁止のところもある。音楽ビジネスがライブをメインの収益源にするようになってもう10年20年という感じだけれども、そのライブが感染源として指摘されるものだから、ライブも中止の嵐で。それは仕方ないにしても外出しないで過ごしている多くの人は娯楽を必要とするわけで、娯楽じゃなくとも心の拠り所を必要とするわけで、それを音楽に求める人はかなりの割合で存在する。とうぜん自宅に籠るミュージシャンもあの手この手でネット上に登場し、人々を元気づかせようとする。それはミュージシャン自身が自らを元気づかせようという行動でもあるのだろう。

そんな中大御所中の大御所ストーンズが公開した新曲MVが話題。8年ぶりらしい。彼らくらいになってくるとすでに発表している過去作品が世界中でコンスタントに聴かれるわけで、ストリーミングの収入だけでも莫大なものになるはず。過去曲からのメドレーでライブは十分に成立するし、8年新曲を出さなくても何も困ることなどなさそうだ。しかし今回こうやって新曲が発表された。MVが公開され、同時に配信での楽曲リリース。この曲はシングルとして6月にアナログのみリリースされることが予定されている。こういうスピード感の点で物理的リリースは配信に負けちゃうよな。ストーンズのファンは年齢層高いので物理的な音源も求められているはずだけれども。CDはどうするんだろう。発表してないだけでアルバムリリースでも予定しているのだろうか。もしも現下のロックダウン状況に応じて急遽作ってリリースしたということなら、アルバムなど期待しようもないが、ミックジャガーはTwitterなどで「元々作っていた曲なんだ。ただこの状況になって、ちょっとだけ歌詞を変えた」ということを言っていた。ということは、この状況でこの1曲だけを急に作ったのではなさそうで、もしかしたらそのうちにアルバムのリリースが発表される可能性もあるかもしれない。かもしれないだけだが。

   We all got locked down
   Feel like a ghost
   Living in a ghost town, yeah

本当にそうだ。僕らはゴーストタウンに幽閉されてしまっている。幽閉されればゴーストのような気分になるのも当たり前だし、彼らのいつもの音楽が陰鬱なムードを増幅させている。陰鬱なムードではあるものの、自粛で家に籠る澱んだ気持ちをストーンズだって同じように味わっているのかと思うと多少気がまぎれる。自分だけじゃないんだって。音楽ってすごいな。

MVには大阪道頓堀など日本の風景も織り交ぜられていて、日本に限ったことかもしれないが、遠く離れているのにストーンズとつながってる気分にもなれる。気分だけだけど、その気分って大事なことだ。オンライン飲み会などで実際に会ってないのに一緒に乾杯している気分にひたってる人たちが全国に溢れている。オンライン飲み会もやってみれば良いものらしい。これでいいなら、離れて暮らしてる人同士の飲み会だって可能だ。気分だけだけど、その気分に人間は支えられている。

そもそもは新型コロナウィルスによるロックダウンを受けて作られたわけではないそうだが、だとしてもあまりにも狙ったかのようなタイミングで、さすがはロック界最高のビジネスマンといわれるミックらしい作品といえる。そもそも表現というのは社会背景と不可分で、社会全体がストレスフルな圧力下に置かれれば人々の心も抑圧され、そのムードを受けた表現が生まれるし、鋭く描いた表現が大きな支持を集めるのも当然のこと。なにも新型コロナウィルスのことに限ったことではない。彼らが狙って書いたかどうかはともかく、時代の空気を敏感に感じ取って、それをいつものように表現しただけ。それが今では作られたら即公開されるため、とてもタイムリーな曲だとリスナーが驚いて話題にしているということなんだろう。

(2020.5.2) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl