<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

魅惑ハレーション『答え合わせ』
【伝えようという意思が、伝えたい中身が、この声を強い歌声にしている】

この強い歌声が好き。息を吸い込んで腹の底から思いっきり吐き出せば大きな声は出る。大きな声は時として威圧感を伴う。怒って相手を威圧したい人が大声を出すのはそういうことだ。しかし、意思の伴わない大声に強さは無い。ただ大きいということだ。ただうるさいというだけだ。うるさい声に人は耳を傾けない。だからただ大きなだけの声で歌ったところで何も伝わっていかない。しかしこの歌はそういう大声とは違って、よく響く。声が前に前にと前進する。もちろん、声はそこそこに大きいし、大きな歌声を出すために必要な筋肉やメソッドも備わっている。歌うために必須なトレーニングも積んでいるのだろうし、生まれながらに持っていた声質というものあるのだろう。そういう意味では恵まれているし、恵まれているものをさらに磨く努力もしていると思う。

だが、そんなことよりも、伝えようという意思が、伝えたい中身が、この声を強い歌声にしているのだ。
ほぼ1年前にも彼らのことはレビューしていて、『スポットライト』という曲のMVはライブハウスでのパフォーマンスをベースとしたロック色の強いアップテンポの曲だった。アップテンポといいつつも演奏のビートとは裏腹に言葉を載せる譜割りは余裕があって、だからどちらかというと歌自体はミッドテンポな印象もあった。しかしビートを前面に押し出した楽曲ではその強さが強調されるから、その歌声の強さそのものを取り出して感じることは意外と難しい。しかしこの曲では楽曲自体のテンポが抑えられたもので、バラードとまではいかないまでも、そのテンポ性のゆえにボーカルがより強調されて前面に立ってて、このボーカルの実力を知るにはちょうどいい。MVの冒頭から数分はボーカルが歌いながら歩くという、アイドルシンガーのMVのような作りになっていて、バンドなのだということがすぐにはわからない。そのことも、バンドだから強いという先入観を排していて、ボーカルそのものに意識を向けられる。バンド全体としてライブハウスでのパフォーマンスというMVで付いてしまう先入観がない状態になっているからこそ、彼らの実力がより伝わってきて、ああ、彼らのことを知ることができて良かったなあと思える。こんなに良いのに、MVの再生回数は3ヶ月で6000回ちょっとだし、チャンネル登録も2000を超えた程度。クズみたいな曲でもYouTubeに広告料を支払ったことで数十万回再生とかになる例をいくつも目にする中、こんな優れたバンドがあまり聴かれていないのは本当に何だかなあと思う。並よりちょっといい程度だったらそんなに思ったりまではしないけれど、このくらい良いバンドだからやはり思う。もっともっと注目されるべきバンドだと強く言いたい。

(2021.6.17) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二, 魅惑ハレーション

Posted by musipl