<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

toitoitoi『ぬめり』【芸能歌謡ではなくロックを聴く意味】

冒頭から画面の向こうからこちらを刺すように見据える視線が向けられている。その視線は徹頭徹尾こちらに向かっている。楽曲やサウンドなどの要素とは一切関係なく、この視線が強く迫ってくる。目にはものすごい力があるということを再認識させられるMVだ。だが目力にだけ心を支配されててもレビューにならないわけで、この目力と並行して歌われるパフォーマンスをしばし眺めて、耳を傾け、感じるのはボーカル岸川まきの視線が聴く者の心を強く射るのは、なにも目力だけじゃないのだなということだ。タイトルは『ぬめり』だが、この曲にはぬめっている印象はほとんど無く、むしろスパッとズバッと瞬間で展開していく切れ味の良さを感じる。その切れ味と瞬発力のゆえ、歌われている歌詞の意味や深みに聴く側が心を停めて吟味するような余裕が与えられてない。だが単なる踊れるミュージックというわけでもなくて、そこに込められた意志のような歌詞にも注目すべきなのだが、それはファンとなって同じ曲を何度も何度も繰り返し聴くという状態になった者にしか到達出来ない、そんなハードルを楽曲そのものが持っているように思う。そう簡単に近づけると思うなよみたいな。以前の楽曲にはそういうハードルはあまり感じられなくて、よく言えばフレンドリー、悪く言えば普通。ということは、やはりこの曲のような境地に試行錯誤の末に到達したのだろうし、意識を向けて何度も聴かなければ到達できねーよ的な音楽を、安易にハードルを下げるようなことをせずに、高いハードルを越えてくるようなファンをどうすれば獲得していけるのかということに全力を尽くして欲しいなんて勝手なことを思う。大変だけど、きっと面白いよその方が。そして、そんなバンドの曲を聴くことこそが、芸能歌謡ではなくロックを聴く意味なんだと思うのです。

(2017.5.25) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl