<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

rem time rem time『ひかりのまち』【深夜の郊外ドライブ体験を思い出させる、美しい歌】

深夜の長距離移動を高速でなく一般道でしていると、なんとも物寂しい気分になることがある。高速道路の主に暗い山の中を走り抜けるのとは明らかに違う、人の息遣いが有るのか無いのかよくわからない雰囲気の中、赤信号で停車する。途中コンビニを発見したら用も無いのに立寄りたくなる。この曲はそういう体験を思い起させる。「ひかりのまち」というのが何を指しているのか。歌詞の中では「プラスチックトウキョー、プラスチックトウキョー」と繰り返されるので、おそらく東京のことなのだろうとは思うが、このrem time rem timeというバンドは八王子を拠点にしていて、だから、渋谷や下北沢という意味合いの東京ではないだろうという気がする。甲州街道を新宿から出発し、立川の手前で左に曲がり、八王子に着く頃にはすっかり東京の都会っぽさは無くなっている。いや、それも東京なんだけれども。かといって八王子が自然ばかりの田舎なのかというとそうではなくて、東京の中の地方都市のような様相を見せていて、だから東京から大阪に深夜移動している途中にある街と共通する、人間の存在を感じさせる空気がある。MVには高速道路と夜の街が次々と映し出される。田舎とも言えず、都会とも言い難い儚さがそこにある。僕はこういうのを美しいと思う。「プラスチックトウキョー、プラスチックトウキョー」という繰り返しが、自分たちの立脚点を危うくさせるような響きを持つのだけれども、しかし実に力強い。論理を超えた、美しさと強さを持っている曲だと思う。深夜にひとりでドライブしていて、こういう曲が流れてくれば、もうちょっと頑張ろうかという気分になるだろう。

(2017.6.15) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl