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アシタカラー『星明りのワルツ』【ささやかな歌の、ささやかな福音を】

生きていれば嫌なことも多かろう。そんなことを全部受け止めてやると、この歌は歌っている。歌ごときで全部受け止められるわけはなかろうとか、気にしないわけにはいかないんだよとか、ツッこもうと思えばいくらでもツッこめる。しかし、そうだろうか。毎日毎日悩んでいたり困っていたりするものだが、不思議なことに1年前の今日自分が何に悩んでいたのかなんていくら考えてみても思い出せない。だから今の悩みも1年後には思い出せない程度のものでしかないはず。それでも、今この瞬間は今の悩みに頭が占められていて、人は悩み苦しむのだ。アシタカラーはささやかなことを歌うバンドだ。彼らが人類すべての悩みを解決できる力を持っているわけがない。そんなのは神の仕事だ。バンドにできることなんてたかがしれている。死ななければならないとまで思い詰めているような問題そのものを解決することなどできやしない。でも、問題そのものと問題について悩むということは別のことで、音楽で「大丈夫」と声かけてもらうだけで、意外と心が落ち着くということはある。心が落ち着けば、問題そのものを冷静に見ることが出来るようになるかもしれないし、出来なかったとしても、一晩落ち着いて眠れるだけで音楽を聴くことの福音というものは大きいのではないだろうか。アシタカラーのささやかな歌にはその程度の福音はある。それで十分だ。

(2018.6.21) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl