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ナツ(Natsu)『コレカラ』【12年活動したバンドが解散しても、終わりなんかじゃない】

今年3月に解散してしまったポタリ。そのボーカル鈴木奈津美のソロ活動がスタートしたようだ。バンド活動12年を経て解散という結論に至る。バンド歴12年はそのままひとりの人間の青春12年であって、他のさまざまなやりたいことしたいことと引き換えに突っ走ったであろう12年が突然ピリオドを打つ。そんなの、どうすれば納得ができるのだろう。とはいえ解散はバンドに付きもので、いくらメンバー個人が続けたいんだと言ったところで他のメンバーにも人生がある。一緒に12年活動する中で、仮に犠牲にしていた別の人生があって、それを取り戻したいのだとしたら誰が邪魔することなどできようか。そうして多くのバンドは解散するのだが、解散したバンド人生に延長戦が許されるのなら、ソロとなっても続けていきたいと考えるのもまた人生の選択である。ポタリのHPを久しぶりに覗いてみると、鈴木奈津美だけがTwitterアカウントを削除しているのがわかる。おお、そう来たか。彼女にとっての新しいソロ活動は、ポタリの延長戦ではないのかもしれない。バンド活動を通じて発言してきたTwitterアカウントは、バンド時代のファンとダイレクトにつながれる窓口だし、ソロ活動を始めるのであればマーケティング上も有効なツールだ。しかし、一旦それを捨てたのだ。ソロ活動をポタリのファンに向けたものにするということは、ポタリ時代を引きずることでもある。その窓口を通じてソロ活動を知る人たちは、解散したポタリ的な音楽を期待する。ボーカルのソロ活動だから、そう期待するのは当然だ。しかしそれによって新しいソロ活動は新しいものにはなりにくい環境を引きずることになってしまう。マーケティング的な有利か、自由な音楽上の不利か。ひとつに選べというのはなかなか難しい究極の選択ではある。要領よくどちらの良い部分もチョイスしてやっていくということだって可能ではある。しかし、それがやれるのであればそもそもポタリのような純粋な音楽など最初から生まれてはいなかったのだろう。

この2分ちょっとのMVにはシンプルなギターの音色とナツのやわらかな歌声が載っている。歌詞のひとつひとつが、バンドの解散と、その痛手と、挫けずに前に進もうとする強さを表している。そのすべてが、これからへの決意のように感じられる。終わりなんかじゃない、コレカラさ。ガラス窓には雨による水滴がたまりナツへの視界を遮る。まるで台風直下のような激しい雨の中でひとり歌う。その情景も彼女の現在の状況を暗示するようだ。しかし、強い意志でコレカラさと歌う。不器用だけれど、だからこその強さで進もうとする。彼女の今後を応援したいなと思わせる良いMVだ。

(2019.8.29) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl