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HEADLAMP『Country mom』
【その点、この曲にはどういうわけだか哀愁がある】

猪突猛進。若者の突破力のようなものを感じる。終始明るいテンションに貫かれた5分ちょっとの曲には、そのテンションとは裏腹に旅立ちの切ない気持ちが詰まっている。ピーター・ポール&マリーのカバーで有名な『500 miles』にも通じる旅立ちの寂しさ。あの曲が作られた時代には汽車に乗って行ってしまえばもうその消息を知ることもない別世界での暮らしが待っていたはず。しかし現在はネットがあって、よほど身を隠そうとしなければ地球の裏側にいたって日常の暮らしぶりは相互にわかる。そんなの較べたらダメだろと思うけれど、実際に住む土地を変えれば時々顔をあわせることも出来なくなるし、いくらネットで時折写真を見せてもらったところで、それはよそ行きに着飾った虚構の暮らしぶりだ。今まで共に吸っていた空気を吸うことも叶わず。やはり旅立ちには悲哀が避けられないのかもしれない。

バンドマンが旅立ちの歌を作る時、特に地方のバンドが東京に活動拠点を移すタイミングで作る時、新しい場所で頑張るぜ的な意欲が先走り、旅立ちの哀愁が抜け落ちてしまっているような物足りなさを感じることがよくある。そりゃあ野望に溢れているだろう。しかし同時に不安もあるはず。わずか5分ほどの曲にいくつものテーマをぶち込めば散漫な作品になってしまうのは当たり前で、だから哀愁が無くても不思議ではない。でも、旅立ちに哀愁がないというのではやはり共感しようにも感情移入しづらいのだ。

その点、この曲にはどういうわけだか哀愁がある。小さなスタジオで飛び跳ねながら、不安よりも新天地での可能性に賭けるよという強い気持ちに満ちている。その旅立ちを敢えて風の強い日にしようと自らを鼓舞している。なのに、哀愁に満ちている。彼らはその気持ちを別れに際して絶対に見送りにくるだろう彼女の心情に託して表現している。上手い。さりげなく荒くれバンドの風をしてても、この創作力はけっこう高いんじゃないかと思う。

(2019.11.25) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl