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道見舞美『ライブハウスにおいでませ』
【カモンベイべーがスパークしている。理由なんて要らないんだよ。サイコーだ】

すごくいい。最初はネタかと思った。そう、よくあるのだ、ライブハウスに来て欲しいという、全バンドマン全ソロミュージシャンの人生最大の当面の願望。来て欲しいのだ、ライブハウスに。もちろん自分が出演する日に来て欲しいけれども、まあ自分の日じゃなくても日常的にライブハウスに行って音楽に浸るような人が増えてくれれば、そのうちにまったく知らない連絡先も知らない人が偶然見に来てくれるようになるかもしれない。かもしれない、かもしれない、、、んなことあるかっ! 無いのだ。そんなことは無いのだ。有り得ないのだ。Wカップで代表チームが大活躍してにわかファンが急増してパレードが行われてトップリーグのチケットが早々に完売するようなことは……滅多にあることではないよ。ましてや、前提として日本代表チームが世界と戦って毎試合テレビで生中継されるようなことがあって初めてその可能性も開けるというものだけれど、そんなこともまったく無いライブハウスで活動しているミュージシャンのライブににわかファンが沸いてくるなんてことは、無いのだ!

まあそんな状況をわかっていらっしゃるのか、道見さんはライブハウスのあれこれを茶化すようにユーモラスに歌い上げていく。いいよ、いいよ。受付のチケット係の役から、生ビールの樽を運ぶ係から客席の掃除から、すべてのライブハウススタッフの役をこなしてみて、最後にシンガーとしてスパークする。そう、まさにスパークするという言葉がふさわしい。カモンベイべーカモンベイべーカモンベイべーNOW!って、こんなに心の底からそのシャウトをしてる人を忌野清志郎以来初めて見たような気がする。かといって心底脳天気というわけでもなくて、ライブハウスに来てくれと誘って、捨て台詞を吐き捨てて帰られるとかいう苦労も織り交ぜつつ、それでも挫けることなく、そう、まったく挫けてる素振りもみせることなく、彼女は歌う。カモンベイべーと。

彼女の歌が、AメロBメロサビみたいな形にとらわれていないのもまたイイ。いや一応あるんだろうけれど、その場その場で言いたいこと歌いたいことを発していて、それにギターで伴奏つけましたみたいな、自由なサウンド。その自由さが、彼女の発言のリアリティを裏付ける、後押ししている。これこそフリージャズじゃないのか、ジャズじゃないけど。とにかくフリー。数ヶ月前に公開されている彼女の別MV『至高の人生』という曲があって、これが中身がかなりネガティブ。それなのに至高の人生ってどうなのって、ちょっと思うけれど、歌を聴いていれば彼女の言葉の表面にある毒のようなものも、結局はそのベースにある彼女のポジティブパワーに覆い隠されるようになってて、結果後味爽やかな気分しか残らない。この曲でも結局カモンベイべーって歌いたかっただけじゃないのって言いたいくらいにカモンベイべーでスパークしている。そう、理由なんて要らないんだよ、とにかく楽しくやればいいんだよと言われているようで、それが説教みたいにならずにひとつの指標のようになってて、聴いていて楽しくなる。サイコーだ。

(※2021.7.28時点で動画が削除されていることを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます。)

(2019.12.19) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl