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BabySitter『潰れたみかん』【めっちゃ夜ヒットで笑っちゃう】

めっちゃ夜ヒットで笑っちゃう。夜ヒットといえば誰もが周知の事柄として進めていいのかというと、まあダメなんだろう。だって夜ヒットの最終回は1990年の10月で、平成元年の話。そこから30年が経過してしまってるわけで。調べてみたら「夜のヒットスタジオ」は1968年に始まって22年間放送されていたフジ系列の音楽番組なのだが、要するに既に放送期間の1.5倍くらいの歳月が、夜ヒットの無い時代として経過してしまってて。そんなのを今の10代、どころか20代に対してさえ「知ってて当然のこと」みたいに話すのは、やっぱりダメなんじゃないかなあと思うのだ。

で、知ってる人は見ただけで判るだろうけれど、このBabySitterという名古屋発の若いガールズバンドのMVはこの夜ヒットのスタジオの雰囲気をほぼほぼ再現している。映像の縦横比も昔風に4:3に。このMVを最初に見た時には「こんなバンド、いたかなあ?」と思った。よくよく見れば背景にある階段前に他の出演者がいないし、ダン池田とニューブリードもいないし、だからこれは夜ヒットじゃないということは判る。だけど最初に見た時は紛れもない夜ヒットの懐かし映像だと思ったのだ。そのくらいによくできている。

この懐かしい映像を10代か20代前半と思われる名古屋発ガールズバンドがMVのネタとして採用しているのが面白い。メンバーが常識としてこの番組や番組セットを知っていたとも思い難いので、おそらくリアルタイムで見ていたスタッフが考えたのだろうと思われるが、同時に彼女たちのメインターゲット層が夜ヒットリアルタイム世代なのかもしれないとも考えられて興味深い。だってこのMVを見て彼女たちについて知らなかった人が「んんん?」と目を留めるのはやっぱり夜ヒットを知ってる人たちだと思うし。もちろん彼女たちのMVはこれだけじゃないし、他のはテイスト違うし、ライブだってSNSだっていろいろと露出はあるのだから夜ヒットリアルタイム世代だけがファン層じゃないぞと言われればその通りですスミマセンと謝るしかないけれど、だからきっと彼女たちと同世代のファンもたくさんいるだろうと思うけれど、このMVをきっかけに幅広い世代からの支持を集められるようになったらいいですねとは思う。

こうしてほぼほぼ昭和の音楽番組を模したMVを見ると、そしてそれが平成元年に終わってしまっているのだということを再確認すると、あらためてあの時代は遠くになっちゃってるんだなあと実感する。数日前に昭和のおばけお笑い番組を思い出させる訃報に接し、ますますそんな気分にさせられる。過去を懐かしみ、旧い世代を悼むのはもちろんだけれども、そういう時こそ、今の最前線にいる表現者に意識を向けてみたいと、みるべきだと旧い世代のひとりとして再認識する。

(2020.4.3) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl