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polly『Slow Goodbye』【自分自身が大切なものを忘れてしまうのは何故か】

栃木県宇都宮市出身のロックバンドと、タワレコのアーチストプロフィール欄には書いてある。彼らに関して具体的に書いてあるのはそのくらいで、彼ら自身のwebサイトにもSNSのプロフィール欄にもジャンルなど具体的なことは書かれていない。楽曲にしてもわりと朧げな印象が漂う。あらゆる音にエフェクターをかけて全体が靄のような霞のようなつかみどころの無さ。だが、よくよく聴くと別に個々の音がぼやけているわけではなく、後ろの方で何かの音色がもやってるだけだった。彼らの以前の曲もひととおり聴いてみると、自主リリース以前の曲についてはボーカルも含めてかなりエフェクターがかけられていたようで、本当に遠いどこかで鳴らされているような印象だったけれど、ここしばらくの楽曲については、霞のようなのは似てるけれど、個々の音はしっかり鳴っていて、かなり変革があったんだろうと想像される。中でもこの曲は特に何かが明確で、それは、歌詞に明確にしようとする意志が感じられるということ。おそらく、誰もが一度聴けば把握できるような、前向きで単純なメッセージソングなどはやりたくないバンドなのだろう。だから音も歌詞もかなり漠然とした感じの抽象的な作品を作り続けているのだと思うが、この曲に関しては、曖昧な言葉が並んではいるものの、ひとつひとつの言葉とそれを歌う姿勢に明確な意志が感じられて興味深かった。つまり、一度聴いただけでギュンと伝わってくる強さがあったのだ。

彼らが歌う喪失の哀しみ。何かを喪失するというのは、その対称としての「何か」が実際に消滅することだけではなく、その「何か」が確かにそこにあったという事実を人が忘れ去ってしまうことも意味している。「なぜ僕らは失くしてしまうの」と歌ったあとに「忘れると失くしそうで」続けられる。それは、自分の力の及ばない事故や病気によって対象が消滅してしまうことへの問いではなく、自分自身が大切なものを忘れてしまうという、自分が主な理由による喪失を「何故」と問いかけている。そのことが、彼らの他の曲よりも強い意志として前に前に出てきているように感じられるのは何故だろうか。本当のところは知る由もないが、彼らの中でそのような喪失の経験があったのではないかなあと想像しながら聴いていた。

(2021.4.5) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl