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2216cm『嫌になる』
【いろいろと問題点っぽいところを乗り越えさせる、音楽の力ってすごい】

自己嫌悪に陥りそうなシチュエーションを次々と紹介する、あるある系の歌詞。あるある系の歌詞の場合、例えば岡崎体育の『MUSIC VIDEO』のようにちょっとだけ上から目線で「ほら、おかしいだろ、オレはこのおかしさに気付いているぜ」みたいな感じになることが多いけれど、この曲は自分がこんな失敗をしたということを紹介しているからか、ひたすら自分のことのように感じて自己嫌悪感を共有することになる。この曲をフォークギターで弾きながら歌ってたら、聴いててとことん凹むことになるだろうと思うのだけれど、サウンドがオシャレポップで、途中から跳ねたシャッフルみたいなテイストになってジャジーな雰囲気も醸し出してきて、だからこんな自己嫌悪ソングなのにまったく凹むことがない。音楽の力ってすごいな。

MVも歌詞が切り替わるばかりで、絵的な変化はほとんど無い。主人公の青いセーターの男子が枕に頭を押し付けて凹んでいるオシャレイラスト。それが数カットの組み合わせで進行してて、それらの絵が切り替わることもほとんど無くて、動画という印象もなくて、紙芝居かと突っ込みたくなるくらい。ある意味手抜き制作MVと言えなくもないのかもしれないが、見てて、手抜きだなんてまったく思わないし、飽きない。これでもかと無理にカット割りを重ねていくことがバカらしいくらいに、こんなに動きのないMVで成立するのかと改めて驚く。これも音楽の力なのだろうか。フォークギターを鳴らして魂の叫びをシャウトする曲のMVがこれだったら成立するのだろうか、いや、いないだろうな。

バンド名がまた面白い。2216cmと書いて「にじいろせんちめーとる」と読むそうだ。最初「21メートルか」と思ったりしたし、読み方判った後でも、「22」で「にじ」と読むのは少々無理があるんじゃないか」と思ったりもしたが、こういうバンド名のおかげで、Twitterアカウントが2216cmとバンド名そのままになっていて、面白い。そういうちょっとした面白さと、正しく読んでもらえないかもしれないというリスクのどちらがどうなのかという問題はあるのかもしれないが、そんなこと知らんぜとばかりにドドーンとバンド名をつけている潔さまで感じられて心地良い。

(2019.5.6) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl