<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

KOWAREMONO『SILENT』【全部自分で弾いているのだよといわんばかりの、ギタリストの地味なアピールポイント】

ミュージシャンの自宅スタジオと思われる空間で演奏するMV。いや、自宅かどうかわからんけど、そこそこ狭いスペースに片山博文氏と鍵盤の女性がいて、そこにミキサーやなんやらの録音用機材が並んでいる。通常スタジオではミキサーなどの卓があるところを演奏するところは別の部屋になっているわけで、このMVではミキサーのある部屋で演奏しているところから、これは自宅スタジオなんじゃないのかなあと推測したのだ。わざわざ自宅スタジオと指摘することで、正式なスタジオで録音していないのだなどと揶揄したいわけではない。むしろその逆で、自宅であってもクオリティ的にも十分な機材が揃えられていて、これだけのサウンドが生み出される。いやあ、いい時代になったよなあとつくづく感心しているのだ。いや、数十年前の状況とは比べ物にならないほど録音機材はハイクオリティにしかも安くなったとはいえ、溢れるカタログ(ネット情報だろうけど)を眺めるにつけ、まだまだ足りないよなあ、もっとあれが欲しいなあ、などと考えたりしているのが普通なのだろうけれど。

この曲を聴いていて、この人はギターが好きなんだろうなあというのが真っ先に感じられることだ。それほどに、音が良い。1曲の中にたくさんのギターが重ねられていて、それ自体はどのバンドのギタリストもやることだが、1人のギタリストが持っている音の引き出しというのは一般的に結構限られている。それはエフェクターの種類による制限ということもあるが、往々にしてギタリスト自身が早々に自分の好きな音に出会って、それ以降音の探求をやめてしまうのだ。やめてしまうこと自体が悪いのではない。出会った自分の好きな音を毎回鳴らしてて、そのことでそのギタリストのカラーというものが生まれる。どんな曲を弾く時も同じ音を出すから、逆にその人のギター音が聴こえると、ああ、あの人が弾いているんだなとファンは感じることができるようになる。だから、音の引き出しが少ないことだけで、あのギタリストはダメだなどと言うのは間違ったことだ。その一方で、この曲では片山氏が鳴らしているギターの音は幅広く、そのどの音色もクリアで澄み渡っている。曲の中ではクリーム色のストラトをただ淡々と同じ流れの中で弾いているが、その中で様々なパートのフレーズを、音色も変えながら弾いて見せている。レコーディングの場では、1音色ごとに音作りをして、1トラックずつ重ねていく。これはMVなので4分26秒の中で次々と弾くべき役割を変えていってて、それがこれが実際のレコーディングではなくMV用に撮影されたものだとわかるのだが、一般の人は、まるでこのMV撮影はレコーディングの現場そのものだと思い込んだとしても不思議はないし、むしろそう思ってもらおうくらいの意図で制作されたんじゃないかとさえ思う。そんなレコーディング然とした体でありつつ、色々なパートやフレーズを全部自分で弾いているのだよということを地味にアピールしているようで、見ていて興味深かった。演奏している自分自身のことは、ウインドシールドにほぼほぼ隠してて、見えにくいようにわざとしているというのに。

(2021.4.30) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


review, 大島栄二

Posted by musipl