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Dortmund Moon Sliders『Night Walk』
【なんとも絶妙なバランスの良さが際立つ】

ポップ、というのともちょっと違う。かといってロックでもなさそうな、シティポップでもなければ、一体これはなんなんだろうか。とても洗練されていて、聴いていてとても心地いい。聴いて心地よければそれだけでよくて、ジャンルなんてどうでもいいじゃないかという想いはありつつも、カテゴライズしづらいアーチストが登場すると、なんかカテゴライズしてみたくなる。それは、解りたいということなのだ。で、彼らのサイトを見にいくと、アーチストでもなくて、「クリエイティヴチーム」と自称していた。ジャンル的な説明については、「「誰もが口ずさめるメロディー」を軸に、シティーポップ、ギターロック、カントリーと様々なジャンルを横断して」とあった。なるほど、様々なジャンルを横断しているのか。じゃあこの曲を聴いただけで判断するのはよくないな。それに、サイトのプロフィール欄にも「YouTubeに投稿した3本のミュージックビデオ」とわざわざ書いてあるし、それくらいは見るべきだ、いや、聴くべきだ。

それで、聴いてみた。もうすぐ2年ほどの活動の彼らだが、聴いてみると驚くほどテイストが違っている。初期のMVはポップとかシティなんとかといった感じではまったくなくて、ロック。といってすげえロックというのとも違ってて、なんというか、ボーカルがかなり前に出てきている印象。ボーカルの声がしゃがれている。バンド名にスライダースと入れてるから、それはストリートスライダースのハリーをイメージしているのだろうか。しかしサウンド自体はストリートスライダースとはあまり似てなくて、ポップ色が強いので、むしろ初期のグイグイきていた頃の佐野元春のような感じ。しかししゃがれたボーカルが前に前にと出ている分だけポップ色の強いバンドとしてのバランスが微妙。それに較べてこの曲のなんとも絶妙なバランスの良さが際立つ。イントロから全ての楽器が均等に鳴っていて、そのアンサンブルがとても心地よい。そこに重なってくるボーカルの声もまるで同じ立ち位置で楽器の一種として鳴っている感じで、存在を主張する度合いが薄れて調和している。思うに、この調和の具合がポップなのであって、それと比して突出した存在を主張するのがロックなのだろう。バンドメンバーの鳴らす音が優れてポップ的であって、それを活かすことがバンドとしての能力を最大化する最短コースなのであって、その点で、この曲はとても成功しているといえるし、成長を感じるし、今後の活躍が期待できる。そう考えてみると、やはりこのバンドはポップ的なのかもしれない。

(2021.4.27) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl