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(夜と)SAMPO『ノストラダムス』【彼らが持っている本物性に誰もが気づくだろう】

声が、とても引っかかる。この曲はミディアムテンポの、どちらかというとバラードに入れてもいいくらいで、あまり毒も棘もない感じの曲で、MVでもほとんど動きもなくて、お嬢様的な雰囲気の衣装で静かに歌っている。だからどちらかというとアイドル的な立ち位置のバンドなのかなと一瞬思うが、この声はそんな感じじゃないぞというのを強く主張しているようで気になる。なので彼らの今年リリースしたアルバムと昨年の3曲入りシングルを聴いてみる。そうすると、この曲だけから受ける印象がまったく的外れだということがわかる。もっともっとロック色の強い曲が並んでいて、演奏ももっと攻撃的だし、その攻撃的なサウンドと競うかのようにボーカルも攻めている。その攻める歌というのに相応しい声質なのだということがよくわかる。ザラザラした質感を持った声が時にシャウトして、時に少し退いて、常に波状攻撃的な歌で攻めてくる。こういうのって例えば初期のJUDY AND MARYにも似てて、やり方次第で化けそうな雰囲気がある。彼らの1stEPのタイトル曲でもある『革命前夜』のMVではビデオの作りもそういうテイストがあって、エネルギッシュに歌うボーカルのなかのいくみの姿をみることができる。このなかのいくみは元加速するラブズのドラマーボーカルで、その姿を5年半前のレビューでも見ることができる。ドラムを叩きながらロックを歌ってた人なのであって、だから、アイドル的な立ち位置というのはまったくの見当違いなのだ。その人たちがなぜこんなアイドルかと間違えそうになるMVを作ってるのか、本当の理由はよくわからないけれど、想像するに、ロック的なアプローチだけでは埋もれてしまうという危機感があったのではないだろうか。MVの再生回数などを見る限り、積極的かつ戦略的な取組みはそこまでできてないように思えるし、だとすると将来売れていくための戦略会議も行われていないのかもしれなくて、たまたま、気まぐれ、というのが正解の可能性も捨てきれないが、結果的にこういうロック的なアプローチではない曲だったりMVに至っているというのは、個人的にはとても正解だという気がする。もちろんこれが最終的な路線であるべきというのではなくて、色々な表現に取り組みつつ、色々な音楽リスナーに音楽が届いていくことが結局はプラスにしか働かないと思うからだ。色々なことに手を出すことで本当の自分がわからなくなったり、結局何がやりたいんだこのバンドはみたいに思われてダメになっていくというのは一般的にあり得るリスクだが、彼らの曲をひととおり聴いて思うのは、1曲目で興味を持って、2曲目以降まで聞くリスナーなら、彼らが持っている本物性にちゃんと気づくだろう。それだけのものを持っているバンドだと、僕も確信したところだ。

(2021.5.10) (レビュアー:大島栄二)


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