<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

deronderonderon『DisLove』【地味で目立ちにくい工夫と努力の跡が興味深い】

2年半前に彼らをレビューした時には当時やたらと多かった踊りまくり系MVで、そのことについて書いてみたりしてた。久しぶりに彼らのMVを見てみるとまったく踊ってなくて、アレっていう軽い驚き。しかし当時のレビューを読み返してみると「他のMVを見てみても別に踊りまくりではなくて、普通」と書いていた。だからもしかしたら踊りまくり系MVの方が彼らにとっては異質だったのかもしれない。

その時のレビューで「この動画のコメント欄には「サカナクションの新宝島っぽい」というのがあって」という点に触れていて、今回のMVを見た時にはそんなことはすっかり忘れてた。きっと当時『KICK ME ASS』のMVに踊りまくりの印象が強すぎてサカナっぽさなんて気付かなかったし、だから印象にまったく残ってなかったんだと思う。で、今回。自然に「なんかサカナクションっぽいな」と感じていた。MV的にも『多分、風。』や『夜の踊り子』にちょっと似てる。でも画的に似てる以上にサウンドが似てる。ミュージシャンに対して誰かに似てるというのはけっして褒め言葉になどならないのはわかってる。レビューを書くのは無論貶したいからではなくて、良いなと感じたからなのだ。deronderonderonのこの曲は、すべてが抑制的に表現されている。踊りまくりの演出は影を潜めて演奏と歌唱以外の動きがすべて封じられている。ボーカルにはエフェクターがかけられてどこか霞の向こうから聴こえてくるようだ。映像の作りも全体的にレトロで、Mac OSがまだ漢字Talk8くらいの頃に必死で作ってたビデオのようだし、2:55あたりのドラムのフィルはそこだけ昔の電子ドラムのような音色で際立っている。しかし鍵盤とギターのサウンドだけやたらと鋭くて、それが全体のビート感を前面に押し出していて心地良い。彼らがバンドとしていったいどこを目指そうとしているのかはまだわからないけれど、単なる誰かの模倣バンドであれば長く続けることなどできないし、曲ごとにテーマ性を持ったビデオを作ったりもすることはない。だがこうやって興味深い音作りと画作りを繰り返している彼ら。それ自体が興味深い。その工夫と努力の跡は地味で目立ちにくいものだけど、だからこそこうやって自分なりにひっかかった部分について書いてみることにも意味があるのではないかと感じている。

(2019.11.19) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


deronderonderon, review, 大島栄二

Posted by musipl