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PINOS『暁』【儚さと力強さが同居する、ツインボーカル2人の決意の歌】

違うタイプの声質のツインボーカル。だから、儚さと力強さが同時に存在していて楽曲として興味深い。歌われていることは別れと、そこから先への躊躇のようなもので、サラリと聴けば失恋の話かと思ってしまう。だが、ある歌詞が気にかかる。「だけどイヤフォン流れるはあの日の声」という言葉。失恋した相手の声を、聞くか? そもそも録音しているか? 昨今はスマホで簡単に日常の動画を撮影できるし、だから声を録音していることだって有り得る。だが、それをわざわざイヤフォンで聞くのか。何かひっかかる。で、HPにあるプロフィールを眺めてみた。それぞれ別のバンドで活動していた2人が結成したユニットだそうだ。だとすると、これは失恋の話ではなくて、自分たちの音楽活動の歌だと読めるし、そう考えればすべてが納得出来る。プロフィールには「今の自分たちの経験があるからこそ作れるものがある」とある。新しいユニットを組んで、それぞれの声の癖をプラスに活かして、失意を希望に変えていく。曲の中盤で、後半で、2人はそれぞれソロで「世界は広いんだってふとした時に思うの」という同じフレーズを歌う。失意の時にはなかなか気付くことのできないそういう単純な事実に気付いた2人の、これは再始動に賭けた決意のような歌なんだろう。だから、言葉のひとつひとつに心がこもって、力強さにつながっているんだろうと思う。個人的な事実が、背景を知らないリスナーにも普遍的な強さとして昇華していて、作品としても秀逸だ。今後どんな風に作品を生み出していって、それがどのくらいリアルなものを生み出せるのか。最初の曲がこれなら、超えていくのはけっこう高いハードルだろう。でも、頑張ってほしいな。力強い気持ちと、声とで。

(2017.9.28) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl