<!-- グーグルアナリスティック用のタグ -->

King Gnu『Flash!!!』
【全体を闇が覆っている不透明さのような面白み】

2000年頃以降くらいに耳にするようになった音楽ジャンルにはどうにもイメージを持ちにくくて、オルタナティブ、ミクスチャー、エモ、コアetc. etc.。いやまあ2000年以降なのかどうかと厳密に問われればもっと前からあったのかもしれないし、そもそも太古の昔に出てきたニューミュージックというのがもはや今となっては謎だし。そういうジャンルというのは「オレたちはこれまでの音楽とはちゃうぞ〜!」みたいな表明でもあったのだろうと思う。音楽を売る側としてはロックかポップか歌謡曲か、あと数個くらいのジャンルに分けてその中のどれなんだということを明確にした方がいいのであって、なぜならショップの店員もCDをどこの棚に置けばいいのか迷わないで済むし、客もこのバンドは知らないけどこの棚にあるからロックで、だったらだいたいストライクゾーンかなみたいな安堵感が持てる。しかしアーチストとしてはそんなこたあ知らねえよ的な、これまでにない音楽をやってるんだよオレたちはみたいな。だから必死で新しい音楽を作ろうとするし、できた音楽を既存のカテゴリーに入れられたくはなかったりする。

しかし一方で作る側も「俺たちゃ新しいものを創りたいんだよ」派ばかりではないらしく、誰かが作った音楽がカッコよくて自分もそんなミュージシャンになりたくて、バンドを作ったら音楽も自然とそっちに似てきて。そういう人たちの努力(?)の積み重ねであるジャンルの音楽というものは固まっていくのだろう。ミクスチャーと言っているバンドのライブを見に行けば大体同じようなサウンドで同じようなファッションで同じようなパフォーマンスを繰り広げている。本人たちは新しい音楽を奏でているのかもしれないが、他人から見ればすべての演歌がデジャヴを見ているかのような均一性とさほど変わらなかったりする。

それでも、多くが枠を自ら規定してその中から頑なに出ようとしない音楽をやることでその枠を維持しているのに対し、その枠の存在など知らないかのように自由に表現をしている人たちがごく稀に存在している。そういうのを才能というのだろう。King Gnuもウィキペディアには「日本の4人組ミクスチャーロックバンド」と書いてあるが、いくつもの曲を聴けば聴くほどそんなんじゃないだろうと思うし、そもそも所謂「ミクスチャー」的な曲などひとつも無い。ひとつひとつ毛色の違った音楽で、全体的におどろおどろしい雰囲気が漂っている。そのおどろおどろしいというのはお化け屋敷的なものではなくて、全体を闇が覆っている不透明さのようなもの。そのたたずまいがロックバンド的なイメージさえ遠ざけていてますますとらえどころの無さを前面に押し出している。これはセールス担当のスタッフは大変だろうなあと思ったりもするが、音楽そのものに力があるので、リスナーは意外とダイレクトにその面白みを受け止めるのだろう。このFlash!!!という曲はそんな中でもロック的な雰囲気が強く、どちらかというと古いタイプのリスナーとしては安心できる。彼らとしてはリスナーを安心させるなんてイヤだと思っているのかもしれないのかもとは思ったりするのだけれども。

(2018.9.4) (レビュアー:大島栄二)


ARTIST INFOMATION →


King Gnu, review, 大島栄二

Posted by musipl