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小谷美紗子『手紙』【その希望は信じるという自らの信念に在るのだ】

昨日Kitriという若いアーチストのレビューを書きながら思い出したので小谷美紗子を。Kitriの歌がどことなく不信に満ちていたのに較べ、この曲の信じる力の強さが対比的だなあと感じる。神社に神などいないのではないかと疑う。政治のシステムがもはや平和を担保しないだろうと嘆く。だが、彼女の歌には希望が満ちている。その希望は信じるという自らの信念に在るのだと歌う。なるほどなあと思う。僕などもよく神社に行っては手を合わせるのだが、神社に神がいるなんて実は思っていない。神話に出てくる登場人物などフィクションだと思っている。けれども神社には行く。神社という組織が何をやっているのかなんてよく知らないけれど、家内安全とかは願いたいと思うのだ。もしかすると宝くじに幸運を願った方が実際のご利益の可能性は高いのかもしれない。だが、宝くじは買わないが神社に入ってお賽銭を投じる。冷静に考えれば費用対効果はどうなんだろうといえなくもないが、神社に行って家族の健康を願うということの方が、宝くじにラッキーを託すよりもよほど大切なことだと思ったりする。この曲はそんなことを裏付けしてくれているようで、好き。

ピアノという同じ楽器から響く音がこうも温度の点で違っていることにも驚く。幸せを願う故に不幸せの可能性を否定しつつ生きるのではなく、幸せの可能性のみを強く願うことの力強さがこの温かさに繋がっているようにも思えるし、それを単にメロディということだけではなく、音の柔らかさ温かさとしても表現してくれているようで、やっぱり小谷美紗子はいいよなあと、3年に1回くらいのペースで思い出しては聴き入ってしまう。

(2019.1.22) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl