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アビガシ『ぬるい』【口を完全に閉じることを拒否したような歌い方がどういうわけだか心地良い】

とても不思議な歌だ。脱力系、というか、口を完全に閉じることを拒否するかのように、常に空気が漏れているような声の出し方。こういう言葉による説明だけをみたら、きっと心地よくない歌が展開していると思われるのではないかと心配するが、実際に聴けば心地よく響くことを理解してもらえるだろう。僕の言葉表現能力の限界もあるのだろうが、聴いてもらえれば、ああ、確かに口を閉じることを拒否してるかのようだなあということもわかってもらえるに違いない。問題は、そういう歌い方や歌声はきっと心地よくないとしか想像できないところにあるのではないだろうか。いや、みなさんの想像力が足りないと言うつもりなんてない。普通は、普通はそういう歌い方の声は心地よくないのだ。ちゃんと口閉じろよと言いたくなるような声にしかならないのだ。なのに、心地良い。不思議だ。とても不思議だ。

アビガシというユニットは札幌で活動中の男女2人組らしい。webサイトのトップ画面には「せんちめんたるぽっぷ」という文字が浮かんでいて、あらためてセンチメンタルポップってどんな音楽なんだろうと考えてみた。センチメンタルな感情を揺り動かすようなポップミュージック、といってもそこから想像できる音楽の幅はとても広い。きっと人によって思い起こす音楽の種類は全く違うだろう。僕はどんな音楽を思い浮かべるかというと、例えば、Jungle Smileだ。90年代後半に活躍して8年ちょっとで活動休止。だが鮮烈なインパクトを当時のリスナーに与えたユニットだった。で、このアビガシのセンチメンタルだが、ジャンスマのそれとはまったく種類が違ってて、いろいろあるなあと思わされる。このMVでは暗いシチュエーションの中で足掻くような雰囲気で展開されているけれど、他の曲『羽化』のMVでは2人が明るい海辺でかなりノリノリのパフォーマンスを披露しているので、まだまだ色々な引き出しを持っているのかもしれない。そんなノリノリのパフォーマンスでも口を完全に閉じることを拒否したような歌い方は不変で安定していて、個人的にはとても心地良い。

(2021.5.18) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl