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田川伸治『スワロウテイル feat.山﨑和也』【「誰かのために生きてきた」という歌詞が何度聴いてもひっかかる】

何度聴いてもひっかかるのは、「誰かのために生きてきた」という歌詞だ。この国には誰かのために生きるべしという呪縛がかけられている。子は親のため、親は子のため。自己犠牲をして社会に貢献せよ。耳ざわりはいいかもしれないが、それは戦時中の国のために死ねという狂気と決定的な違いなどない。もちろん人間は社会的な生き物だし、誰かと助け合わなければ生きていくことは難しい。誰かに助けてもらうのなら自分も誰かを助けなければ。それはその通りだ。だが、その観念はやがて自分を犠牲にして誰かを助けろという脅迫になる。よほど気をつけて自分を大切にしていなければ、簡単に自分の人生は他人のものになる。奴隷じゃないのだから、自分の人生は自分のために存在しているということを、ことあるごとに僕は確認しなければと思っている。

この曲は柔らかくて優しいメロディを軽やかなギターの音色でコーティングしていて、本当に耳ざわりがいい。ギター上手だな。このギタリストは元DEENのギタリストだ。そしてDEENを知らない人には田川伸治は歌ってる人だと思っちゃうかもしれないが、軽やかなギターを奏でている人こそ田川伸治です。このやわらかなギターの音色に罪はないし、むしろ素晴らしい演奏だし、純粋にその響きを楽しみたいと思う。しかしながらどうしても誰かのために生きてきたという言葉がこの響きに載せられていることに警戒してしまう。それはまるで善意によって他人の人生を滅私させようとする空気のようなものだからだ。このギターは善である。心にしみる歌声もきっと善だ。そういった多くの善に包まれることによって、人は身動きができなくなっていくこともあるんだよなということを、この曲を聴きながら考えてしまった。

(2019.1.4) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl