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オールタイムベストソングス! 〜2000レビューを超えて〜 part3

夜更けに聴きたい曲たち

MISOLA『カゼノフクヨル』

この曲の夜を徘徊する感じがめっちゃ好きです。昼の寂しさと夜の寂しさって違ってて、また昼の楽しさと夜の楽しさも違ってて。この『カゼノフクヨル』には夜の寂しさと夜の楽しさが入り交じるワクワク感が混在していて、だからこの曲を聴いて夜を迎えると、ただただ寂しいだけの夜ではなく、寂しい中にも夜の何かと出会えるような期待が膨らんで、夜の散歩に出かけたくなってしまうのです。


夕焼けアフロ『おかえり』

曲冒頭からなんだか絶望的な気分にさせられる歌詞とメロディ。何かに追われる時って、具体的に何に追い回されているのかなんてよくわからなくて、ただただ何かが迫ってくるような不気味さに絶望的になってしまうわけで。この曲も具体的に何があるのかなんて説明してくれてないのに、漠然と胸を締め付けるような、ジワジワと迫ってくる表現が続きます。でも、「まだ間に合うから」とか「帰ろう」とか言われると、なぜだかホッとするのです。「何に」間に合うとか「どこへ」帰ろうとか、具体的なものは必要なくて、ただただそういう行き場や居場所が多分あるのだという希望が、追いつめられた人の心を安心させていく。そういう魔法に満ちた曲だと思います。何回聴いても感動の総量が減ることのない名作です。


ガリザベン『たいようはあのこの』

希望に満ちた圧倒的に強い歌。いかにもイケメンのボーカリストがイケてる服装を着て高そうな楽器を抱えてカッコいい言葉を歌にしてるような音楽とは完全に対極にある音楽だと思います。何の根拠もなく「オレは無敵やで」という現実無視の宣言と、指先を眺めては指紋の迷路を辿ったり、中指にあの子の匂いを感じ取ったりという徹底した現実観察とが交互に語られる不思議。そんな徹底した現実の中に奇跡を願う歌だという意志に、この曲が希望に満ちている理由があるのだと思います。


松崎ナオ『川べりの家』

毎週土曜の夜にNHKで放送されている「ドキュメント72hours」のテーマソング。番組が無名の人々のささやかな楽しみや悲しみに、いちいち寄り添うことなく淡々と映し出すというスタイルで、テレビにありがちな盛上げ的演出のほとんど無いリアルが興味深くてよく観てます。そんな無名の市井の人々をこの歌もやはり突き放すようで、でもどことなく包み込んでくれるようで、とても不思議な歌。松崎ナオのところどころ音程が外れるナチュラルな裏っ返りもまた、市井の普通の歌声のようで泣けてきます。


湯木慧『バースデイ』

囁くような声で奏でられる歌。サビでシャウトするといってもそんなに声が張られるわけでない。それなのに心の底から訴えてくるような強さに満ちあふれている。社会の中で声をあげられない小さな心が精一杯こぶしを振り上げているような真剣さがあって、聴いていると他のことをやっている手が止まります。歌詞にあるように「不安で息苦しくなっても、真っ直ぐ真っ直ぐ前を向いて生きていけよ」という彼女自身の心持ちが精一杯表されているようです。



エネルギッシュな曲たち

POLTA『エンド オブ ザ ワールド』

平成なのに昭和を感じさせるPOLTA。いったい何が昭和を感じさせるのか確信はないけれど多分ボーカル尾苗愛の声。歌う曲すべてを昭和歌謡にしてしまう尾苗愛恐るべし。そのPOLTAの疾走感溢れるロックチューンのこの曲が持つ緊迫感と焦燥感がとてもグッときます。「今は世紀末、本当は世紀末」とサビで繰り返すこの曲は、パンデミックで人々が混乱している時代背景の中でよりリアリティを持って響きます。「きっと生きてもう一度君と逢おう」、まさにその通りだ!


WANIMA『アゲイン』

WANIMAというバンドの良さはシンプルで判りやすいということ。彼らを知ったのは息子が通ってた保育園の運動会で使われていたから。チェックするとPIZZA OF DEATH。メロコアの総本山みたいなレーベルでありプロダクションです。メロコアというと英語詞で伝統芸能のようにスタイルを継承、というより模倣しているようなバンドも多くて。ファンの間ではそれでいいんでしょうけど、様式美に浸っている間はそれ以外のリスナーに支持を広げることは出来ないよといつも思ってた。でも、WANIMAはそんなこと無くて、伝統様式美とかよくわからんけど俺たちは好きなことを歌にするもんねといった感じのストレートさに溢れてるし、それだからこその訴える力180%という圧力を持っているんじゃないでしょうか。たまたまこの曲をレビューしたけれど、彼らの曲は全部いいです。


ピロカルピン『箱庭の世界』

ピロカルピンはそれこそインディーズの頃から知ってて、移転する前の新宿HEAD POWERあたりでよく観てました。もう15年くらい前のこと。それがちゃんと続けてずっとやってるうちにスタイルを確立しているのをみるとスゴイなあと心から思うし、そのスタイルが自己満足的な歪なものではなく、何度聴いても飽きない表現に昇華していて、本当に出会えてよかったなあと思えるバンドです。


めばゑ『ハワユ』

全編名言が詰め込まれている名曲。エネルギー満載で聴いてて勇気がエンドレスに沸いてくる。「美しいばかりではない、それでも是が私の生き様だ、素晴らしい今を生きていこう!」とシャウトするめばゑさんのなんと美しいことか。その美しさ清らかさに、聴いているだけでこっちまでも浄化させられるようで本当に嬉しくなる名曲。


有刺鉄線『あの頃、オレンジの靴』

自分のレーベルで一緒に仕事をしていた青春パンクロックバンドの有刺鉄線。様々な困難を乗り越えつつやってきた彼らの活動も311を期にあっさりと終焉を迎え、世の不条理を感じた。しかしそういう困難にぶち当たり、挫折を繰り返して前に進むのが青春というものだとしたら、彼らの生き様そのものが青春パンクだったに違いありません。この曲はそういう青春そのものの世界観をもっとも良く体現していた曲。イントロを聴くだけでいろいろ泣けてきます。太っちょギタリスト山﨑は今何をしているんだろうか。311に行く手を阻まれた彼は今この新型コロナウィルスによって再び道を阻まれようとしていないだろうか。もちろん彼だけの話ではないのだけれど、すべての挫折を乗り越えて生きてきた人たちがこの困難に朽ち果てることのないようにと願ってしまうばかりです。


THE リマインズ『アイラブユー』


【リンク先の動画は削除されています】

THE リマインズ、本当にカッコいいんですよ。この『アイラブユー』という曲は今はもう動画が削除されていて、多分メンバーが脱退してるからだろうけれど、シンプルで勢いがあって。それは最初にブルーハーツが出てきた時のような勢いがあって、本当に好きでした。今も現役で活動してるけどね。この曲、僕はCD持ってるからいつでも聴けるけど、どうしても聴きたい人はamazon musicにあるので、アカウント持ってれば聴いてみるのも善し、CDをポチるのもいいと思います。最高です。


次は『ジワジワくる曲たち』/『しんみりする曲たち』



article, 大島栄二

Posted by musipl