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オールタイムベストソングス! 〜2000レビューを超えて〜 part5

ニヤニヤする曲たち

モルグモルマルモ『タクラマカン砂漠』

京都の怪バンド、モルグモルマルモ。musiplを始めようと思ったきっかけのひとつとなった曲ですよコレ。なにがタクラマカン砂漠なのか。ふざけてるぜホント。でも1度聴いたら忘れることのできない面白さとインパクト。でも曲としては良くできてるんですよ。単なるコミックソングじゃない秀逸なポップミュージックです。


私の思い出『荒野のネッカチーフ』

これもアホさ加減で突き抜けてる。なぜそんなにまでネッカチーフのことを歌うのか。しかもこれほどにマジメに。ただただ笑ってしまう。それにしてもモルグモルマルモの『タクラマカン砂漠』といいこの曲といい、なぜ砂漠的なところにいって撮影してしまうのか。考えるだけで楽しくなってしまうのでもう考えたくはありませんっ。



POPな曲たち

土岐麻子『STRIPE』

土岐麻子大好き。もう土岐麻子サマと呼びたい。時代時代でいろいろなポップスターは出てくるし、例えばかつてはユーミンだったり、竹内まりやだったり。しかし土岐麻子サマも全然負けてない。勝ち負けじゃないのはわかってるんですけれどね。紅白がいまだにユーミンや竹内まりやを担ぎ出して盛上がろうとしているのを見ていると、そりゃあ紅白見てる人の年齢層を考えたら妥当なことかもしれないけれど、土岐麻子サマを出せよと思っちゃう。聴いてくださいよ、この曲の洗練されたポップ度合い。日本のポップ界も捨てたもんじゃないよと胸を張って宣言したくなるクオリティです。必聴です。彼女の曲は全曲必聴です。


NYAI『Pomason』

今年3月に発見した福岡のポップバンドNYAI。デビュー当時のフリッパーズギターを思い出させるほどの洗練されたポップチューンですな。これからどんどん活躍していくのかそうでもないのかはまだまったくの未知数ですけれど、こういう発見があるから音楽は楽しいなと本当に心の底から思わせてくれます。


blend note『ビカムライクユー』

2014年にレビューして、彼らのHPもTwitterも2016年の更新を最後に止まってしまってて。そういうの、ちょっと哀しいんですけれど、それでもこうして音楽は残っていて、聴きたくて辿り着く人にはちゃんとこのポップネスが披露される。こういうのスゴいなあと思います。こういう突出した才能の人にはどんどんと音楽を作ってもらいたいなあと思うけれど、まあ全部が全部続いていくわけではないですしね、仕方ない。今後の活動が仮にないとしても、この曲の素晴らしさはいささかも損なわれることはないでしょう。名曲です。


め組『ぼくらの匙加減』

これをポップに分類すべきかどうかは迷うところですけれど、このストレートさ、直球一色線な感じがポップだなあと個人的には思うわけです。さらりと聴いちゃうと他の多くのポップロックバンドとどこが違うのと理解してもらえないのかもしれないなあと心配するんですけれど、たくさんいろいろな曲を聴いてきた僕の絶対の確信として、この曲めっちゃいいです。他の凡庸なバンドたちとはまったく違う魅力に満ちていて、これまでも何度も何度も聴いちゃいましたし、今もここでオールタイムベストとして挙げなきゃと真っ先に思っちゃった曲のひとつなんですよホント。


村田知哉『レインコート』

ポップの定義はなんなのかといえば、諸説あるし断言など誰も出来ないということを前提としつつ、僕としては「一見意味のなさそうなものに意味を付与すること」ということがポップなのだと思うのです。その観点からいえば、この村田知哉の『レインコート』こそはポップそのもので、この曲を聴いて、さらにはこのおしゃれなMVを眺めていると、ただのレインコートが雨をさえぎる衣類という以上のステキな価値をもった何かに思えてきます。この数日のニュースでは、ただの雨ガッパを集めて医療用感染防護服として使おうということがやたら喧伝されてて、ホンマかそれ、大丈夫なんかと思ったりしますが、そういう時にはこの曲を聴いて、ポップミュージックの魔法によって「レインコート、素晴らしいよ!」と自分に暗示をかけてみるのも一つの方法かもしれません。



注目アーチストの曲たち

LUCKY TAPES『MOOD』

LUCKY TAPESはこの数年登場したポップバンドの中でも特筆すべき才能だということは間違いないでしょう。歌詞を書くということが歌を構成するひとつのパーツを形式的にあてがうということであれば並の才能でしかなく、そういう詞は秀逸なメロディやサウンドを乗算的に引き立てることは出来ません。逆に詞が詩として単体のアートとして存在し得るクオリティを持った場合、凡庸なメロディでさえも輝かせることも可能になるわけで、そういう点からもLUCKY TAPESの非凡さは理解されると思うし、その上メロディもサウンド構成力も抜群なのだから、これからの活動がますます期待される新鋭だと確信します。


ヒグチアイ『ココロジェリーフィッシュ』

最初から最後まで120%の圧力で連打する鍵盤が激しく鳴ってサウンドを構成する。しかしその圧倒的なピアノの音を凌駕するようなヒグチアイのシャウト。歌にはAメロBメロサビという基本の構成があって、聴けばだいたい、ああここでサビに入るんだなと判るものだけれど、ヒグチアイのシャウトとテンションは常に壮絶な空気の圧で迫ってくるので、全編サビなのかとつい錯覚してしまう。すごい。2015年のレビューの頃と較べて最近はもっと静かに歌う表現が多いけれど、だからといって圧が減ったのかというとそうではなく、むしろ内面の葛藤が静かに染み出るように迫ってくる。彼女の歌を聴くにはこちら側の心の準備が必要ですが、そうまでしても聴きたい音楽などそうそうないことを考えれば、やはり注目すべき、壮絶な才能であることは明らかなのです。


藤原さくら『Goodbye』

福岡の旧い友人の知人の娘さんらしいです。福岡の音楽というと古くはめんたいロックとかが主流を占めてて、それは今でもそういうバタ臭い種類の音楽を思い浮かべてたんですけれど、だから同じ港のある音楽都市としてリバプールと比較されるの勘弁してよと思ってたんですけれど、こんなワールドワイドにおしゃれとして通用するクオリティの音楽が出てくると、ホントもうバタ臭くないよねと誇らしく思います。そういえば椎名林檎もMISIAも福岡出身の歌姫なのであって、もうそろそろシナロケとかサンハウスとか海援隊とかのイメージから脱してもいいよね福岡。


コレサワ『パープル』

コレサワは基本的に軽〜いテイストで私的なラブソングを斜に構えたスタンスでポップに展開しているバンド(ユニット?)なんですけど、この曲は実にシンプルに真正面から歌い上げた切ない別れの歌。抗えない別れに際して、ありえそうもない再開と、その先のありえそうもない再びの恋を歌う。それがとても切なくてグッときます。卒業とかのどうしようもない別れってその時には切なくとも新しい環境で新しい出会いを得て新しい人生の展開を繰り広げていくもので、その新しさに向かっていくためにも名残惜しい気持ちはその時に押さえ込むのではなく思いっきり燃焼させておくのが必要なのでしょう。たとえそれが自分の心の中だけの妄想だとしても。


LILI LIMIT『A Short Film』

LILI LIMIT、見方によればひねくれた、別の言い方をすれば斜に構えた、だけど自分の内面に出来るだけ忠実に表現をした結果独特で個性的な作品が仕上がったという、そういうアーチストなのだと思います。この曲なども彼らの中でも最高にピュアでひねくれた曲だと思うし、この中で描かれている対象への偏愛は、聴いてるだけで嗚咽がこみ上げてきそうになります。聴き手にBGMとして流して聴くことを許さず、全力で聴くことを強いるようなタイプの、新しいポップミュージックだという気がするのです。


LONGMAN『WALKING』

LONGMANは男女混声ボーカルのメロコアバンドで、インディーズ時代からめっちゃ多くの支持を集め、つい先日メジャーデビューを果たしたところ。メジャー直後の曲で女性ボーカルのSAWAだけが歌うという曲でタイアップを取ってMVを公開して、それが他のMVとは再生数で数倍となってしまって、ああ、メジャーデビューしてからその曲で彼らを知った人はきっと間違うだろうなあと危惧します。しかしながらそういう展開を経た上でも、本来の彼らの音楽は素晴らしいので、きちんと理解して評価する人たちがきっと残っていくのでしょう。皆さんもLONGMANを聴くのマストです!


日食なつこ『ログマロープ』

激しく鍵盤を叩くように鳴らす情熱の鍵盤シンガー、日食なつこ。もうね、全曲高く評価しまくりです。彼女のMVは「なんでそこで弾く必要あんねん」と疑問しか残らないシチュエーションばかりなのですが、この『ログマローブ』では雪深い山の中で。この鍵盤、軽めのキーボードじゃなくてそこそこの重さのある電子ピアノですよ。この雪深い山奥になぜ運ぶのか。誰が運ぶのか。疑問符がいくつあっても足りませんけど、その結果完成した映像はインパクト満点になってしまって。だからまた次の曲でも困難な場所にピアノを運んだりしてしまうことになってしまうんでしょうね。そうまでしても聴かせたい音楽、聴かせるべき音楽というものがあるとしたら、彼女の曲はそういう努力に見合う素晴らしいクオリティ。みなさんも是非聴いてください。


クアイフ『桜通り』

今回紹介する最後の曲。ズシリと重い、自死した友人へ問いかける歌。クアイフは森彩乃がキーボードを弾いて歌うのを中心に据えた3ピースバンド。インディーズ時代には結構尖った攻めのサウンドを展開してて、メジャーデビュー後には多少丸くなったというか、より幅広いファンを獲得できるような、いってみれば強い個性を少々薄めたような作品にシフトしていきました。昨年夏にリリースした8曲入りのアルバムから、MVが制作されたこの『桜通り』は少しばかり異質な感じがするものの、深い洞察とそこから導き出された光景を少々突き放したように表出するクアイフ本来の表現が戻ったような印象さえあるのです。聴いてみて、人はどう思うのでしょうか。興味深い。本当に友人が自死したという人と、そんな知人は周囲にいないという人とで、この曲への感想は変わっていくのでしょうか。興味深い。そしてこういう曲をさらりと書いて歌ってるクアイフのことが、今後もずっと目が離せません。


以上、僕のオールタイムベスト51曲でした。どうせだったら50曲にしたいと思ったものの、どれを削ればいいんだろう。RCのが2曲入ってるよね。だからそれを削ればいいんじゃないのって自分でも思うけれど、削れないもんなんですよ。失礼しました。

今後もmusiplのレビュー活動は続けていくし、新しい才能はこれからも出てきて、それを紹介することになっていくでしょう。同時にもう活動を止めた昔のアーチストのことも掘り起こして紹介していくでしょう。僕だけじゃなく、協力してくれるレビュアーさんにも本当に感謝してるし、彼らのアンテナが僕では絶対に察知できないアーチストを掘り起こしてくれるので、世の中には本当に良いアーチストは沢山いるのだなあと感心する毎日です。だから、青春時代に聴いた歌だけじゃなく、最先端のアーチストにも注目して、多少歳を取ってもいつまでも新たな青春の1曲をみんなが見つけてくれればいいと思います。

でわでわ。



article, 大島栄二

Posted by musipl